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2015年3月27日金曜日

その昔、室蘭で。①





環境汚す新日鉄住金」 

先日、僕はこの「赤旗」の記事をツイートした。鉄鋼スラグを埋立した土地が土壌汚染を引き起こし、多大な損害を出している…、という話、それ程長い記事ではない。

ところがその後、どうも気になって、国会での市田忠義議員の質疑応答を知りたくなり、その議事録を探し出して読んでみたのだ。

そしてもう、その内容にはビックリ…。

日向市の「フェロニッケルスラグ産廃問題」に関心がある皆さんには、是非ともこれを読んでほしいと思い、解かりやすい表記にしてブログに掲載することにした。


■ 深刻な土壌汚染が今になって発覚

今から50年近く前、まだ廃掃法が整備される以前に、室蘭市の新日鉄住金は鉄鋼スラグを自社所有地に直接埋土していた。その後、新日鉄住金はその土地を自治体に売却、造成、区画整理されて、その大部分が使用されている。

ところが、最近の土壌調査で深刻な土壌汚染が発覚、特に八丁平という住宅地近くの公園では、基準の1400倍にも上るヒ素が検出された…、という話だ。


■ 質疑応答からみえてくるもの

以下に議事録の一部を全文掲載する。これね…、長くて時間もかかるかもしれないが、ぜひ読んでほしいと思っている。市田忠義議員の質問はとても解かりやすく、読んでいて質疑応答の様子が目に浮かぶようだ。

新日鉄住金といえば、当時の新日鐵室蘭、室蘭市の王様企業である。質疑の中では汚染の実態と共に、企業の姿勢や北海道庁、地元の議会、そして環境省の対応など様々な「ニュアンス」が見えてくる。

「フェロニッケルスラグ産廃問題」が起こった、その背景が連想できると思う。






第187回国会 環境委員会 第2号
平成二十六年十月十六日(木曜日)

(廃棄物処理法施行以前の産業廃棄物埋立処分による土壌汚染問題に関する件)

国務大臣  環境大臣
      (内閣府特命担当大臣(原子力防災))  望月 義夫
委員長                       島尻安伊子(自民党)
理 事                       市田 忠義(共産党)
環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長       鎌形 浩史
環境省水・大気環境局長               三好 信俊
厚生労働省労働基準局安全衛生部長          土屋 喜久


http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/187/0065/18710160065002a.html


○市田忠義君 
 日本共産党の市田です。今日は、環境問題と大企業の社会的責任という問題について、幾つかの事例を挙げながらただしたいと思います。

 最近、鉄鋼スラグやダストが土壌汚染を引き起こして、ヒ素、鉛、あるいは水銀、フッ素などが基準を超過して検出されて、その原因の究明と汚染対策が求められると、そういう事態が各地で起こっています。廃棄物処理法第三条は事業者の責任について、「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と、こう規定しています。この法律が施行されたのはいつでしょうか。

○政府参考人(鎌形浩史君)
 廃棄物処理法につきましては、一九七一年、昭和四十六年に施行されております。

○市田忠義君 
 私、先日北海道に行って、産業廃棄物になっている鉄鋼スラグなどによる土壌汚染問題を調査をしてきました。

 まず、登別市の市内、緑町というところの消防署建設予定地から土壌環境基準を超えるフッ素が検出をされました。そのために、登別市は消防署の建設を断念をして、民間への売却を今検討しています。元々、この土地は新日鉄室蘭製鉄所が低湿地、低いところの湿地ですね、この低湿地を鉄鋼スラグなどで埋め立てて一九九六年六月に登別市に売却したものであります。その結果、登別市に多額の損害を与えることになりましたが、売却の際、新日鉄室蘭側が産業廃棄物である鉄鋼スラグが埋まっているということをきちんと説明しないで登別市に売却していたとしたならば、新日鉄室蘭側の説明責任を私、問われると思うんですが、環境省、いかがでしょう。事務方で結構です。大臣にはまた後で聞きます。

○政府参考人(三好信俊君)
 先生お尋ねの北海道登別市の事案、土壌汚染対策法を担当しております北海道庁に確認をいたしました。登別市が消防庁舎建設予定地として新日鉄住金株式会社から購入した土地について自主的に土壌調査を同市が実施したところ、フッ素の基準超過を確認したということでございます。  

 それで、当該土地の汚染の原因でございますけれども、汚染の原因が特定できていないということでございまして、御指摘ございました過去に鉄鋼スラグを埋設していたという事実はございますけれども、それの使用者は不明ということでございます。また、汚染がフッ素ということでございまして、以前には低地ということで海水の浸入のあった可能性がある場所というふうに承知をいたしているところでございます。

○市田忠義君 
 これ、売却九六年なんですね。新日鉄室蘭による埋立地であることはもう明白になっておるわけですから、当然新日鉄側には説明責任があると。

 この登別市の消防署建設予定地と地続きになっている室蘭市の旧東中学校跡地、ここを室蘭市が民間企業であるイオンに売却しようとして土壌調査をしました。そうしましたら、環境基準を超えるフッ素が検出をされ、地下に鉄鋼スラグが大量に埋められているということが判明しました。この結果、室蘭市は五億七千万円で売却の予定、これイオンに売却しようとする予定だったんですが、鉄鋼スラグの処理料として一億五千万円を値引きして民間企業に売却せざるを得なかったと。この土地も新日鉄室蘭の鉄鋼スラグによって埋められていた場所であります。

 ここでも室蘭市は多額の損害を被ることになったわけですが、少なくともイオンには、産業廃棄物である鉄鋼スラグの説明責任を市の側が果たして処理料を減額するということで損害を与えることはありませんでした。しかし、室蘭市がこの土地を取得した際、新日鉄から、鉄鋼スラグが埋められているという説明を受けていなかったとしたら、これも私、新日鉄室蘭側が説明責任を果たしていないと、この責任を厳しく問われると思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(三好信俊君)
 先生お尋ねの室蘭市旧東中学校跡地でございますけれども、室蘭市が、御指摘のとおり、売却に先立ちまして自主的に土壌調査を行った結果、フッ素の基準超過を確認したということでございます。同じく、原因について道庁に確認をいたしましたが、この土地につきましては、汚染原因につきましては、御指摘の鉱滓、鉄鋼スラグを同中学校建設の路盤材として使用していたことが原因ではないかということでございますけれども、その鉱滓がどこから発生したものであるかということについては確認ができていないということでございます。

 御指摘のとおり、室蘭市は鉱滓の除去費用相当額を差し引いて売却済みというふうに承知をいたしております。

○市田忠義君
 尋ねていることに答えていないですよ。新日鉄室蘭側がきちんとその土地を売却するときに、そこはそういうもので埋め立てた場所だよということをちゃんと説明する必要があったんじゃないかと。そういうことを知っていたら、そこを消防署の予定地にしたりする必要はなかったわけで、そういう損害を市として被っているわけですよ。

 それは、あれですか、今の答弁だと、新日鉄室蘭には何の責任もないという立場ですか、環境省は。

○政府参考人(三好信俊君)
 原因者についてのお尋ねというふうに考えておりますけれども、汚染原因、一点目で御指摘の消防庁舎建設予定地でございます登別市に関しましては、土壌汚染対策法を所管いたしております北海道庁に確認いたしましたところ、汚染原因が特定できていないということでございます。そういうことで、そのように対応していく必要があるというふうに考えております。

○市田忠義君
 じゃ、汚染原因はちゃんと解明させるんですね。重要な環境問題が起きているわけですから。登別市や室蘭市、大変な損害を被っているわけですよ。汚染原因きちんと解明しなさいという指導はやる予定ですか。

○政府参考人(三好信俊君)
 土壌汚染対策法上、原因者の究明までは求めておりませんけれども、土壌汚染対策で費用が発生した場合に、所有者が一義的には土壌汚染対策を取りますけれども、必要な場合には原因者から費用負担を求めることができることになっておりまして、そういう土壌汚染対策法が北海道庁において適切に運用されるべきものと考えているところでございます。





○市田忠義君
 じゃ、大臣の認識を問いたいんですけれども、私が調査したのでは、新日鉄室蘭は、産業廃棄物である鉄鋼スラグを低湿地に埋め立てた土地を造成して、そのことを説明しないで自治体などに売却してきた。購入した自治体が公舎の建設や民間への売却の際にその土地を調査したところ、土壌汚染が発見されて多大な損害を被ったと。少なくとも、新日鉄室蘭が自らの責任で産業廃棄物を適正に処理をして産業廃棄物が埋め立てられているという説明責任を果たしていたならば、こういう土壌汚染や多大な損害を自治体と住民に与えるということは私なかったんだと思うんですね。この点について、大臣の認識、どうでしょう。

○国務大臣(望月義夫君)
 一般的に、事業者というものは、その事業活動を行うに当たって、公害の防止や自然環境の保全等のために必要な措置を講ずることを求められていると考えております。ですから、このような環境負荷の低減の取組により社会的責任を果たすとともに、その取組の内容について説明責任を果たすことは非常に重要であると、このように思っております。

○市田忠義君
 大臣の方がしっかりした答弁ですよ。

 民法の五百六十六条の規定でも、契約の解除又は損害賠償の請求は買主がその事実を知ったときからとされているんですね。ところが、室蘭市も、私、市議会の会議録を読んでみましたら、これは法成立以前に埋め立てたんで、だから適法なんだと盛んに言っているんですよ。だから、適法だったら大企業は何やってもいいのかと、そういうことが問われているときに、後でもちょっと触れますが、住宅地や公園とかそういうところも実は新日鉄の鉄鋼スラグなんかで埋め立てられていたというので今大問題になっているから私そういうことを聞いているわけです。

 室蘭市は、新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて鉄鋼ダストなど産業廃棄物処分場として埋め立てていた八丁平というところがあるんです。新日鉄室蘭はこの処分場の上に土地を造成した。そして、この土地が一九八六年に区画整理をされて、新日鉄室蘭の社有地、それから室蘭市の市有地及び公園、民間住宅などが造成をされました。最近、室蘭市の開発構想に伴ってこれらの土地を調査をしたら、いずれの土地からも基準を超える有害物質が検出されたと。特に、私調べて驚いたんですが、公園からは基準の千四百十倍のヒ素、二十三倍の鉛が検出されました。  

 まずお聞きしますが、この土壌汚染は新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて約百七十万トンのダスト等を埋め立てたために起こったことであると、これは間違いありませんね。事務方で結構です。

○政府参考人(三好信俊君)
 お尋ねの室蘭市八丁平の市有地の土壌汚染でございますけれども、先生御指摘のとおり、土壌調査を同市が実施いたしましたところ、水銀、鉛、ヒ素及びフッ素の基準超過を確認したということでございます。

 その土地につきましては、昭和三十八年から昭和四十九年にかけまして、新日鉄住金、これは現在の名前でございますけれども、により廃棄物等が埋め立てられていたというふうに承知をいたしているところでございます。ただ、その後、市が造成ということでその土地に手を加えておりますので、どの程度新日鉄住金の廃棄物が原因となっているかどうかということにつきましては灰色の部分があるというふうに考えております。

○市田忠義君 
 そこまで新日鉄を別にかばう必要はないんですよ、あなた。
 
 私聞いたのは、その埋立地は、市の調査報告書を見ても、あなたが冒頭答えたように、この土壌汚染は新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて約百七十万トンのダスト等を埋め立てたために起こったことであると、ちゃんと市が委託した調査報告書の中にそういうふうに報告しているわけですから、原因はもう明白だと。あれこれほかのことを言う必要ないんです。新日鉄室蘭が自分の会社の所有地に自らの責任で適正に処理して管理をしておれば、こういう土壌汚染は私は発生しなかったと思うんですね。

 新日鉄室蘭が、廃棄物処理法第三条で規定されている、「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」、これに基づいて自らの責任で産業廃棄物を適正に処理していたとは私は到底言えないと思うんですが、これは環境省の認識はいかがですか。

○政府参考人(鎌形浩史君)
 廃棄物処理法の適用の関係ということでございますけれども、先ほどお答え申しましたとおり、廃棄物処理法は昭和四十六年に施行されているということでございます。ですから、当該埋立てがどの時点で行われたかによって適用関係が異なってくるというふうに思います。そういう意味で、昭和四十六年の施行以前にその埋立ての処分が行われた場合には廃棄物処理法の適用を受けないということになります。

  ただ一方で、昭和四十六年の廃棄物処理法施行後にその鉄鋼スラグの埋立処分が行われた場合でございますけれども、先生のおっしゃる事業者の責任というところの条文も適用になろうかと思いますし、また、基準の面でも、そのスラグがいわゆる有害鉱滓に該当すると認められる場合には公共の水域及び地下水と遮断された場所に埋め立てる、こういった基準がございました。さらに、その基準につきましても、昭和四十八年に改正がありまして、何が有害鉱滓に当たるかということについて、一定の基準を超える重金属が含まれる場合と明確化されて、その有害鉱滓に当たる埋立てが行われた場合には廃棄物処理法に問題があると、こういうことだというふうに認識しております。

○市田忠義君
 法律施行は一九七一年だと。それ以前に埋立てをやっていたか以後でやっていたかで適法かどうかというのは違うというお話です。

 私、適法かどうかということももちろん法律上は重要だと思うんですけれども、法の施行以前であったとしても、現にそこに住んでいる住民やあるいは住宅地や公園やその他が汚染されているとすれば、これは極めて重大であるわけで、適法かどうかということだけで環境省として私判断してはならないと思うんですが、この辺は政治的な判断だと思うので、大臣、いかがですか。

○国務大臣(望月義夫君)
 今先生お話ございましたが、一般的に廃棄物処理法、事業者はその事業活動に伴って生じた産業廃棄物を自らの責任において適切に処理しなければならないこととなっております。したがって、自社で発生した産業廃棄物について自社敷地内で処理を行う場合であっても、廃棄物処理法に規定する基準に従って適正な処理を行うことが当然必要であると考えております。

 今先生のおっしゃった廃掃法の、今のお話の中で廃掃法のその処理の、法律の前後で考えますと、この法律の前は内容はゆるゆるのものであって、今になってみればもっと早く作っておけばよかったなと先生のおっしゃる、指摘されるのはそのとおりだと思います。

 ただ、一般的には、その法律の前に遡及するというもの、法律というのは一回決まりますとその前に遡及することはなかなかありませんが、しかし、企業というもの、これ社会的責任というのは十分に、先ほどから私申しましたように、あると思いますので、そういった意味で社会的責任を感じてしっかりと対応すると。我々も、そういう意味ではそこを見守るといいますか指導するといいますか、そういう形はあると思います。

○市田忠義君
 法規制以前の問題としてやっぱり責任を回避してはならないと。大企業の廃棄物処理、土壌汚染対策にはやっぱり重大な問題点があるということを指摘しておきたいと思うんです。

読了、お疲れさまでした。

中身の話は、もちろん次回に。

<②につづく>



2015年3月6日金曜日

証拠とロジック、僕の感性。




3月4日、黒木さんの3回目の裁判があった。

今回も、裁判を傍聴されたイワシさんがブログ(鰯の独白「3月4日宮崎地方裁判所延岡支部第1法廷 第3回審理」)にその様子を記述してくれた。前回同様、大変感謝している。

こうした記述によって、裁判の内容が多くの方に伝わることの意義は大きい。

もちろん記述すること自体が判決に影響を及ぼすものではないが、裁判の公正性を担保するのは多くの「第三者」の視点なのだ。民主主義の原点を感じさせてくれる。そして、こうした行為が何より黒木さんの力になるに違いない。

黒木:「裁判長。裁判長はどういうふうに思われましたか?」
裁判長:「どういうふうに、とは?」
黒木:「私の書いた陳述書を、裁判所はどう思ったかを教えていただきたいのです」
  すると裁判長は、あきらかに困惑した。   (鰯の独白より)

僕はこのやりとりに「目から鱗」的な、ちょっとした衝撃を受けた。

この裁判が始まってからというもの、やれ訴状が…、やれ証拠が…、そんなツイートをイヤというほど見てきた。もちろん裁判なので、法とロジック、そして証拠が重要な事は間違いない。

ところが、黒木さんは陳述書に記載した自分の行動について、裁判長に主観というよりも、むしろ「人としてどう思うか」みたいな質問をしたのだ。まさか裁判長もこんな質問をされるとは思わなかっただろう。

 ■■■

僕はふと思い出した、彼女のツイートを見かけた1年前の事だ。

「ゴミは持って帰って、自分の前に積んでください。」

タイムラインを流れる数々のツイートの中で、彼女のこうした訴えは異色だった。僕が日頃接している一連の文脈とは、明らかに違うものだった。

それに添付された画像。

切り開かれた山中に投棄される、永久に馴染むことのなさそうな緑色の砂。

… これはゴミだろう・・・。

僕たちにはそれを感じるセンサーがある。有価物とか廃棄物とか、そんな何かの理屈で造られた単語を並べる前に、「人として」善悪を判断する感性がある。

彼女の言葉は、そこに訴えてくる。

「裁判長はどういうふうに思われましたか?」

黒木さんのスタンスは何も変わっていない。

 ■■■

「偽装リサイクル」は偽装されている。

なので、「偽装リサイクル」をしている者は、声高々に「これは合法だ」と言えるロジックを持っている。「偽装リサイクル」は常に合法の中に存在するのだ。

これを看破する最初のステップは、僕たちに備わっている感性だ。

ダメな事は、ダメ。まずはそこからだ。


<おわり>