「事業者はこれを『造成工事』だと主張している。僕にはそうとは思えない。」
■ 「引っ掛かり」
僕は何度か、同じようなツイートを繰り返してきた。覚えている方もいるかもしれない。「これは造成工事だ」とする業者側の言い分に、何か「引っ掛かり」のようなものを感じていたからだ。
このブログでも、「土地造成した場合の地権者のリスクや責任」について、自分なりに思いつくことを書いてきた。なにか矛盾点が引き出せるのではないか…、そんなつもりで、様々な想定をして疑問点を並べていくつもりでいた。
しかし、その試みは12月に止めてしまった。
理由の一つは、事業者が「造成工事だ」と主張する以上、その主張に合わせた「証拠書類」は揃っているに違いない、ということだ。
黒木さんのブログを読むと、事業者、地権者共に、商取引について話の整合性が取れていないことがわかる。しかし、彼らも訴訟するにあたって、辻褄が合うストーリーを設定し、それを裏付ける証拠書類を用意してくるであろうことは、容易に想像できる。さらに、そのストーリーをベースに「黒木さんの書いたブログは虚偽だ。」という戦術に出てくることも、想像に難くない。相手にしているのは地元の大企業と自治体だ、準備に抜かりはないだろう。
そして、もう一つの理由、僕の「引っ掛かり」は疑問へと変わったからだ。
■ 沈殿池
黒木さんのブログには「沈殿池の水から有害物質が検出された」ということが書いてある。実を言うと、僕はこの「沈殿池」を、自然にできた水溜りのようなものだと勝手に想像していて、それ以上何も気にしていなかった。
ところが、三浦ばんしょう氏が開設した「日向製錬所産廃問題ネットワーク」のブログに掲載されていた「沈殿池」の画像を見て、僕の想像が全くの見当違いだったことに気付かされた。
「沈殿池」とは、浄水などの目的で造られた「設備」なのだ。
沈殿池(ちんでんち) コトバンクより
鉱業廃水や工場廃水に微粒の固形物を含む場合,それを沈降させて水を清澄化する役目を果す池。清澄化された水は用水として再使用するか河川へ放流する。沈殿池は沈殿物を運び出す都合上,底を水平にしセメントモルタル張りとするのが普通である。
(以下、画像は「日向製錬所産廃問題ネットワーク」よりお借りします。)
(画像1 沈殿池 人の背丈ほどの深さがある)
… なんで、こんなものが必要なの…??
この「沈殿池」という名称は、黒木さんがそう呼んでいるのであって、その所以が分からない状態では、この設備を「沈殿池」と決めつけるには無理がある。過去に事業者の誰かから、そう説明を受けたのであれば確証は高いだろう。
もちろんこの設備が、治水対策のための「調整池」である事も考えられる。
(画像2 段差部分 雨水対策のパイプが設置してある)
■「造成工事」と称されるもの。
昨年の夏ごろから、僕は、ヒマを見ては「フェロニッケルスラグ検索」に明け暮れていた。しかし、僕の検索力や語学力では、「フェロニッケルスラグは有害だ」と確定できるような書類をネット上で見つけることはできなかった。
… こういう時は図書館だな。
そう思いたったのは11月、実際に足を運んではみたものの、東京近郊の図書館で「フェロニッケルスラグって何?」的な本など置いているはずもない。「ま、そうだよな・・。」などと自嘲しながらも、「鉄鋼スラグの製造法」や、その他、何冊かの本を手にすることができた。
そして僕は、ある本に載っていたイラストに目を奪われた。
(画像3 安定型最終処分場の見取り図)
… 安定型最終処分場・・・?
ここからは、僕の主観による推測と疑問を記述する。
この見取り図は、彼らが「造成工事」と称するものに酷似している。
見取り図左下に「雨水などの排出設備」との記述があり、図中には雨水を下流に流す溝が設けられている。これが、画像2で見られるパイプとまるで同じだ。
また見取り図中央右に「浸透水採取設備」、右下には「地下水の水質検査」とある。画像1の「沈殿池」はそれを簡易的に代替する用途で設置されているのかもしれない。浸透水の水流を考えると、位置的にも当てはまりそうな感じだ。
見取り図右、グレーで示された「貯留構造物」、これは「土留め」になるのだろう。
「造成工事」には、この「土留め」は設置されていない。その代り、傾斜壁にすることで土砂崩れを起こしにくくしている。この土地の地形に対して、埋土するフェロニッケルスラグの容積が少なかったか、もしくは、土留め設置の工事費用を削減するためか…、そんな理由が自然と思い浮かぶ。
「造成工事」と称されるもの…。
これは安定型最終処分場なのではないのだろうか?
そう思ったとき、僕の「引っ掛かり」は、ひとつの疑問へと変わった。
(画像4 全体が見渡せる どれだけのフェロニッケルスラグが埋まっているのだろう)
<②につづく>