黒木さんの裁判について考えた、このタイトルの第2回目。
確認のため書いておくが、これは素人のケーススタディである。何か「正解」を導き出すような作業ではないことを、ご考慮頂きたい。目的は「FNSの有害性を立証するのは黒木さんだ」と言う主張に「待った」をかける事にある。
■ 訴訟の概要
こうした経緯で事態は名誉棄損訴訟になった。解かりやすいように、論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の1点に絞り、黒木さんの行為が名誉棄損でない事を立証するには、何をもって抗弁したら良いのかを、考えてみたい。
論 点 「フェロニッケルスラグの溶出有害」
摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為 ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した
名誉棄損免責のための抗弁3要件から、抗弁の概要は以下の通り。
■ 公共性、公益性
抗弁の3要件、①公共性②公益性③真実性もしく真実相当性。
この3つをすべてクリアして、はじめて被告は名誉棄損から免責される。あらためて、この考え方はとても合理的だと感心する。
例えば、①公共性→摘示事実に公共性があって、③真実性→それが真実であっても、②公益性→つまり目的が私利や私怨に基づくものであれば名誉棄損は免れない。
また②公益性→目的が社会的な利益のためで、③真実性→それが真実であっても、①公共性→摘示事実が「相手のプライベイト」であれば、やはり免責されないのかもしれない。
今回の件では、「フェロニッケルスラグの溶出有害は真実か」という、
「③真実性」ばかりに考えが行きがちだけれど、①公共性と②公益性の立証はそれと同じぐらい重要であることを、よく考える必要がありそうだ。
① 公共性 「フェロニッケルスラグの溶出有害」は公共の利益に関することか?
摘示事実、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、当該敷地内だけでなく、地域を流れる河川や地下水などを経由して、有害物質が広域に拡散する可能性を示している事は明らか。摘示事実は公共の利益に関する内容であると考えられる。
② 公益性 「ブログで公表する」事の目的は公益性を図ることか?
摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」を知った黒木さんは、当初、当該事業者、地域の役所や警察等の行政機関に何度も出向き、摘示事実に対して納得のいく説明や安全性の証明、もしくは公的な対処を求めたが、当該事業者からは十分な説明や解答を得ることはできず、また、行政機関による対処もなされることはなかった。
こうした状況を経て、黒木さんはそれに代替する手段として「ブログで公表する」事を選び、摘示事実を広く一般に周知させることで、当該事業者や行政機関に対して認識の刷新を促し、求めている解答や対応を得ようとしたと思われる。
であるならば、「ブログで公表する」という行為は、当初黒木さんが行った、
当該事業者や行政に対する要求行動の延長上にあり、その目的は同一であると考えられる。
ではその目的とは何か。
摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、その地域で生活をする多くの人々の健康を害し、生命を危険にさらす可能性のある重大問題である。また、農作物に与える被害、その後の風評被害などを想定すれば、地域にとっては死活問題にもなりかねない。
黒木さんが当該事業者に納得のいく対応や責任の所在を求めてきたこと、またそれを果たさない当該事業者に対し、行政機関による対処を求めてきたことの目的は、
、明らかに地域の安全を確保する事にある。それは「地域の公益性を図ること」そのものであるばかりでなく、憲法13条に保障された「幸福追求権」に該当する国民が持つ権利の行使である。
さらに、ブログに何度も記述があるように、黒木さんが当該事業者に訴えている最たる要求は、「当該敷地内にあるフェロニッケルスラグの除去(ゴミは持って帰ってください)」に他ならない。仮に「ブログで公表する」事で当該事業所の名誉が毀損され、悪評が周知され、業績等に影響が出たとしても、それは黒木さんにとって何ら意味のない帰結であると理解されるべきである。
以上の考察から、適示行為「ブログで公表する」事は、公益を図る目的である。
また、黒木さんが「ブログで公表する」事で、摘示事実をより多くが知る事になり、「金属スラグの埋土問題」を広く一般に警鐘する結果となった。これが「一般の公益性」に寄与している事も指摘しておくべきである。
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このケーススタディは僕の思いでもある…、書いていて、そう思った。ひょっとしたら完全に的外れな指摘かもしれないが、それでもこの記述を続ける価値は、僕にはあった。
すっかり長文になってしまったが、次回は③真実性もしくは真実相当性。
ようやくこのタイトルの本題に入れそうだ。
<③につづく>