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2015年2月23日月曜日

「造成工事」と称されるもの。②

「造成工事」と称されるもの、それは安定型最終処分場ではないのか…?



■ 3種類の最終処分場

廃棄物を埋立する最終処分場には次の3種類がある。

① 管理型最終処分場

最も一般的な最終処分場で、底部、側面には遮水シートを敷く等の「遮水工事」をして、さらに浸出水を集水して無害化できる汚水(浸出液)処理設備が必要である。

基本的にフェロニッケルスラグは「金属鉱さい」なので、処分する場合、この管理型最終処分場で最終処分しなければならない。

② 遮断型最終処分場

有害物質(重金属等)を含む産業廃棄物で、固化処理など、不溶化対策ができないものに適用する。上部には屋根を設け、側面、底部はコンクリートで完全に遮断する。また埋立終了後はコンクリートで完全に蓋をする。

「金属鉱さい」においても、基準を超える有害物質が検出される場合には、この遮断型最終処分場にて最終処分しなければならない。

③ 安定型最終処分場

ガラス・陶磁器くず、金属くず、廃プラスチック類、建設廃材、ゴム類など「安定5品目」に限定されていて、埋立による浸出水がない事が前提となっている。構造的には、崩壊を防止するえん堤を設ければよい。つまり安定型最終処分場は「穴掘って埋めちゃえ」方式、直接埋土なのだ。

法律には「安定5品目」に加えて、「環境大臣が指定したもの」という6番目の項目がある。僕はこの点について環境省に電話で確認した。スラグ化した金属鉱さいであっても、現在この「環境大臣が指定したもの」にはなっていないそうだ。

 ⇒「日本産業廃棄物処理振興センター


■2つの問題

ここで確認しておかなければなない事が2つある。

まず、フェロニッケルスラグは安定型最終処分場で埋め立て処分することはできない。言い換えれば、「直接埋土してはいけない」ということになる。「遮水処理+汚水処理設備」、場合によっては「完全遮断」すべき物質、ということだ。

ところが、これを事業者は直接埋土している。

まったく同じ物質が、「製品であれば直接埋土可能」である一方、「廃棄物であれば直接埋土不可」という扱いになっている。これは完全な矛盾ではないか。

そしてもうひとつ。

最終処分場はその設計から運用、跡地利用に渡って「永久管理」が必要になる。何かがあった場合、誰かが対処する責任が永久に続く、ということだ。

そのため最終処分場の運営は、公営もしくは都道府県が許可した民間事業者に限られている。産業廃棄物の場合は民間事業者=産廃事業者が行うわけだが、都道府県はこの産廃事業者に対して強い監督権限と指導責任をもっている。

ところが「造成工事」の場合、地権者が大量のフェロニッケルスラグを購入した事になる。つまり、その責任はすべて所有者である地権者にある、ということだ。

僕の主観では、この「造成工事」は安定型最終処分場に酷似している。

これを個人が「永久管理」しなくてはならないのだ。


(ダンプカーの大きさを考えると、どれだけ大量のスラグが埋まっているか…)

  ⇒「その土地はどこへ
  ⇒「無過失責任


<③につづく>


2015年2月17日火曜日

「造成工事」と称されるもの。①



「事業者はこれを『造成工事』だと主張している。僕にはそうとは思えない。」


■ 「引っ掛かり」

僕は何度か、同じようなツイートを繰り返してきた。覚えている方もいるかもしれない。「これは造成工事だ」とする業者側の言い分に、何か「引っ掛かり」のようなものを感じていたからだ。

このブログでも、「土地造成した場合の地権者のリスクや責任」について、自分なりに思いつくことを書いてきた。なにか矛盾点が引き出せるのではないか…、そんなつもりで、様々な想定をして疑問点を並べていくつもりでいた。

しかし、その試みは12月に止めてしまった。

理由の一つは、事業者が「造成工事だ」と主張する以上、その主張に合わせた「証拠書類」は揃っているに違いない、ということだ。

黒木さんのブログを読むと、事業者、地権者共に、商取引について話の整合性が取れていないことがわかる。しかし、彼らも訴訟するにあたって、辻褄が合うストーリーを設定し、それを裏付ける証拠書類を用意してくるであろうことは、容易に想像できる。さらに、そのストーリーをベースに「黒木さんの書いたブログは虚偽だ。」という戦術に出てくることも、想像に難くない。相手にしているのは地元の大企業と自治体だ、準備に抜かりはないだろう。

そして、もう一つの理由、僕の「引っ掛かり」は疑問へと変わったからだ。


■ 沈殿池

黒木さんのブログには「沈殿池の水から有害物質が検出された」ということが書いてある。実を言うと、僕はこの「沈殿池」を、自然にできた水溜りのようなものだと勝手に想像していて、それ以上何も気にしていなかった。

ところが、三浦ばんしょう氏が開設した「日向製錬所産廃問題ネットワーク」のブログに掲載されていた「沈殿池」の画像を見て、僕の想像が全くの見当違いだったことに気付かされた。

「沈殿池」とは、浄水などの目的で造られた「設備」なのだ。


沈殿池(ちんでんち) コトバンクより
鉱業廃水や工場廃水に微粒の固形物を含む場合,それを沈降させて水を清澄化する役目を果す池。清澄化された水は用水として再使用するか河川へ放流する。沈殿池は沈殿物を運び出す都合上,底を水平にしセメントモルタル張りとするのが普通である。

(以下、画像は「日向製錬所産廃問題ネットワーク」よりお借りします。)


(画像1 沈殿池 人の背丈ほどの深さがある)


… なんで、こんなものが必要なの…??

この「沈殿池」という名称は、黒木さんがそう呼んでいるのであって、その所以が分からない状態では、この設備を「沈殿池」と決めつけるには無理がある。過去に事業者の誰かから、そう説明を受けたのであれば確証は高いだろう。

もちろんこの設備が、治水対策のための「調整池」である事も考えられる。


(画像2 段差部分 雨水対策のパイプが設置してある)



■「造成工事」と称されるもの。

昨年の夏ごろから、僕は、ヒマを見ては「フェロニッケルスラグ検索」に明け暮れていた。しかし、僕の検索力や語学力では、「フェロニッケルスラグは有害だ」と確定できるような書類をネット上で見つけることはできなかった。

… こういう時は図書館だな。

そう思いたったのは11月、実際に足を運んではみたものの、東京近郊の図書館で「フェロニッケルスラグって何?」的な本など置いているはずもない。「ま、そうだよな・・。」などと自嘲しながらも、「鉄鋼スラグの製造法」や、その他、何冊かの本を手にすることができた。



そして僕は、ある本に載っていたイラストに目を奪われた。


(画像3 安定型最終処分場の見取り図)


… 安定型最終処分場・・・?




ここからは、僕の主観による推測と疑問を記述する。

この見取り図は、彼らが「造成工事」と称するものに酷似している。

見取り図左下に「雨水などの排出設備」との記述があり、図中には雨水を下流に流す溝が設けられている。これが、画像2で見られるパイプとまるで同じだ。

また見取り図中央右に「浸透水採取設備」、右下には「地下水の水質検査」とある。画像1の「沈殿池」はそれを簡易的に代替する用途で設置されているのかもしれない。浸透水の水流を考えると、位置的にも当てはまりそうな感じだ。

見取り図右、グレーで示された「貯留構造物」、これは「土留め」になるのだろう。

「造成工事」には、この「土留め」は設置されていない。その代り、傾斜壁にすることで土砂崩れを起こしにくくしている。この土地の地形に対して、埋土するフェロニッケルスラグの容積が少なかったか、もしくは、土留め設置の工事費用を削減するためか…、そんな理由が自然と思い浮かぶ。




「造成工事」と称されるもの…。

これは安定型最終処分場なのではないのだろうか?

そう思ったとき、僕の「引っ掛かり」は、ひとつの疑問へと変わった。




(画像4 全体が見渡せる どれだけのフェロニッケルスラグが埋まっているのだろう)


<②につづく>




2015年2月9日月曜日

自公政権が作ったSLAPP社会



2月4日、日向製錬所他による黒木さんへの訴訟について2回目の公判が開かれた。

その様子について、公判を傍聴された方のブログ(鰯の独白「2月4日宮崎地方裁判所延岡支部1号法廷メモ」)に、とてもわかりやすい秀逸な記録が記述されている。遠距離にいて、なかなか公判に出向くことができない僕のような人間にとって、こうした記録は大変有難いものであり、ブログ主に感謝を申し上げたい。

今回の黒木さんに対する訴訟は明らかなSLAPPだと僕は思っている。

そして、こうしたSLAPPが出版社やジャーナリストに対してだけでなく、ブログで「ゴミ問題」を訴えた1個人にまで及ぶ現象、これは明らかに異常事態である。この潮流をどこかで止めなければ、行き着く先の社会は暗澹としたものになってしまうだろう。

では、こうした異常事態いつから始まったのか…。

それを明らかにする大変興味深い記事が見つかったので、このブログに全文転載保存しておきたい。黒木さんの裁判に注目する多くの方々に読んでいただければ、と思っている。現在の司法制度はすでに歪んでしまっている、それがこの国の実態なのだ。




自公与党、批判封殺のため最高裁への圧力発覚 政界に激震、国会で追及へ発展か
Business Journal 2月8日(日)

 最高裁判所の元裁判官で明治大学法科大学院教授の瀬木比呂志氏が、1月16日に上梓した『ニッポンの裁判』(講談社現代新書)において、衝撃の告発をしている。1月29日付当サイト記事『与党・自公、最高裁へ圧力で言論弾圧 名誉毀損基準緩和と賠償高額化、原告を点数化も』でも報じたが、自民党と公明党による実質上の言論弾圧が行われているというものだ。

 2001年、当時与党であった自民党は、森喜朗首相の多数の失言を受けて世論やマスコミから激しく批判され、連立与党の公明党も、最大支持母体の創価学会が週刊誌などから「創価学会批判キャンペーン」を展開されるなど、逆風にさらされていた。そのような状況下、自公は衆参法務委員会などで裁判所に圧力をかけ、裁判所がそれを受けて最高裁を中心に名誉棄損の主張を簡単に認めるように裁判の基準を変え、賠償額も高額化させ、謝罪広告などを積極的に認めるようになった。

 両党が森内閣や創価学会への批判を封じるために最高裁に圧力をかけたという事実はもちろん、最高裁が権力者である自公与党の意向を受けて裁判における判断基準を変えていたことも、民主主義の大原則である言論の自由、また三権分立をも根底から脅かす、大きな問題である。

 また、名誉棄損の基準が歪み、それを悪用した恫喝訴訟が民事でも刑事でも蔓延しており、大きな社会問題となって各方面に影響が広がっている。瀬木氏の告発を報道する国内メディアが相次ぎ、海外の報道機関も取材に訪れていることから、さらに騒動は拡大する見通しだ。時の政権が実質上の言論弾圧をしていた事実が明らかになったことで、政界にも動揺が走っている。

●政界に広がる反響

 前回記事は瀬木教授の最高裁内部の実態の告発を中心としていたが、政界での事実経緯を振り返るため、今回は当時の議会での動きを振り返ってみたい(以下、肩書はいずれも当時のもの)。

 森政権や創価学会が世論から批判を強く浴びていた01年3月、法務大臣の高村正彦氏(自民党)は参院法務委員会で、「マスコミの名誉毀損で泣き寝入りしている人たちがたくさんいる」と発言した。これを受けて故・沢たまき氏(公明党)は「名誉侵害の損害賠償額を引き上げるべきだと声を大にして申し上げたい」と、同月の参院予算委員会で損害賠償額の引き上げについて、まさに“声を大にして”要求。魚住裕一郎氏(同)も同年5月の参院法務委員会で「損害賠償額が低すぎる」「懲罰的な損害賠償も考えられていけばいい」と強く要求した。

そして同月の衆院法務委員会で、公明党幹事長の冬柴鐵三氏が大々的にこの問題を取り上げて「賠償額引き上げ」を裁判所に迫った。これを受けて最高裁民事局長は「名誉毀損の損害賠償額が低いという意見は承知しており、司法研修所で適切な算定も検討します」と回答した。

 つまり、自民党と公明党の圧力によって最高裁が名誉棄損の基準を変えていたのだ。そして裁判所が安易に名誉毀損を認めるようになり、その結果、不祥事を起こし追及されている側がそれを隠ぺいするために、また性犯罪者が告訴を取り下げさせるために、告発者や被害者を名誉毀損だとして訴える“恫喝訴訟”が頻発するようになった。

 このような経緯について、現役の国会議員からも与党に対して批判の声が上がっている。衆議院議員の落合貴之氏(維新の党)は、告発に驚きを隠さない。

実質的な恫喝目的で名誉棄損を悪用するケースや、公益通報者を保護しないケースなど、多様な陳情が寄せられています。その原因が、与党の自民党の圧力にあったという告発に大変驚いています。恫喝訴訟の問題については、国民を適切に保護するために、また被害者の方々が保護されるように、議員としてしっかりと取り組んでいきたいと思います」

 一方、都内の区議会などでも反響が上がっている。世田谷区議を務める田中優子氏(無所属)は、次のように語る。

「性犯罪者側が、被害者女性や支援者を訴えている恫喝訴訟問題などに強い憤りを感じていました。しかし、その元が与党による最高裁への圧力だと聞き、大変驚いています。司法がこんな状態では、いったい国民は何を信じればよいのでしょうか。このような問題は区議としても注視して、被害者が適切に保護されるように尽力していきます」

 このように本問題については、政界でも国会から地方議会に至るまで、多くの議員から批判の声が上がっており、今後国会での質問主意書などで取り上げられる可能性も高い。

 これは現在の安倍政権ではなく、過去の自民党・公明党の問題であるが、安倍政権が過去の与党の問題に対しても毅然とした対応をできるのか、今後の動きに注目が集まっている。


<おわり>