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2015年6月22日月曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ③


黒木さんの裁判を、僕なりに考えてみたこのタイトルの3回目。

確認のため書いておくが、これは素人のケーススタディであり、何か真実を提示するような内容ではない。目的は「FNSの有害性を証明するのは黒木さんだ」という主張に「待った」をかけることにある。

ようやく、このタイトルの本題に入れそうだ。

【 訴訟の概要 】 
論 点    「フェロニッケルスラグの溶出有害」
摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した
名誉棄損免責のための抗弁3要件


■ 真実性
「摘示事実『山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した』が真実である」という抗弁をするためには、他にもいくつかの要素は予想されるが、最終的には「フェロニッケルスラグから有害物質が溶出する」ということ、つまり「フェロニッケルスラグの溶出有害性」を立証する事が不可欠になる。

「フェロニッケルスラグ本体」が争点になる、ということだ。



■ 真実相当性
では真実相当性の場合はどうなるのか、再び最高裁判決を見てみよう。

「行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁 昭和44年6月25日)

真実相当性の場合、立証するポイントは「確実な資料、根拠に照らした相当の理由」ということになる。摘示事実が真実かは問題にならない。

今回の件では、黒木さんが何を見て、何を聞いて、何を知ったうえで、摘示事実「山林にフェロニッケルスラグが埋土されて有害物質が流出した」をブログに書いたのか、その「根拠の相当性」を立証することになる。

つまり「ブログの記述」が争点、ということだ。


さらに付け加えると、真実相当性の場合「ブログを書いた根拠」がポイントになるので、ブログを書いた後に知った事実は証拠にならない。


 ■■■

「真実性」もしくは「真実相当性」、一聴ではその言葉に大きな違いはないが、実際の意味はまるで違うし、どちらを選ぶかで裁判の内容は大きく違ってくる。

どちらを選択すべきなのか…、それは次回に続けたい。

「黒木さんのブログにウソなんか書いてない」、僕はそう思っている。そんな黒木さんが罪に問われるなんて、オカシイだろう…

そうは思わないか?


<おわり>

2015年6月19日金曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ②




黒木さんの裁判について考えた、このタイトルの第2回目。

確認のため書いておくが、これは素人のケーススタディである。何か「正解」を導き出すような作業ではないことを、ご考慮頂きたい。目的は「FNSの有害性を立証するのは黒木さんだ」と言う主張に「待った」をかける事にある。


■ 訴訟の概要




こうした経緯で事態は名誉棄損訴訟になった。解かりやすいように、論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の1点に絞り、黒木さんの行為が名誉棄損でない事を立証するには、何をもって抗弁したら良いのかを、考えてみたい。

論 点    「フェロニッケルスラグの溶出有害」
摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した

名誉棄損免責のための抗弁3要件から、抗弁の概要は以下の通り。



■ 公共性、公益性

抗弁の3要件、①公共性②公益性③真実性もしく真実相当性。この3つをすべてクリアして、はじめて被告は名誉棄損から免責される。あらためて、この考え方はとても合理的だと感心する。

例えば、①公共性→摘示事実に公共性があって、③真実性→それが真実であっても、②公益性→つまり目的が私利や私怨に基づくものであれば名誉棄損は免れない。

また②公益性→目的が社会的な利益のためで、③真実性→それが真実であっても、①公共性→摘示事実が「相手のプライベイト」であれば、やはり免責されないのかもしれない。

今回の件では、「フェロニッケルスラグの溶出有害は真実か」という、「③真実性」ばかりに考えが行きがちだけれど、①公共性と②公益性の立証はそれと同じぐらい重要であることを、よく考える必要がありそうだ。


① 公共性 「フェロニッケルスラグの溶出有害」は公共の利益に関することか?

摘示事実、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、当該敷地内だけでなく、地域を流れる河川や地下水などを経由して、有害物質が広域に拡散する可能性を示している事は明らか。摘示事実は公共の利益に関する内容であると考えられる。

② 公益性 「ブログで公表する」事の目的は公益性を図ることか?

摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」を知った黒木さんは、当初、当該事業者、地域の役所や警察等の行政機関に何度も出向き、摘示事実に対して納得のいく説明や安全性の証明、もしくは公的な対処を求めたが、当該事業者からは十分な説明や解答を得ることはできず、また、行政機関による対処もなされることはなかった。

こうした状況を経て、黒木さんはそれに代替する手段として「ブログで公表する」事を選び、摘示事実を広く一般に周知させることで、当該事業者や行政機関に対して認識の刷新を促し、求めている解答や対応を得ようとしたと思われる。

であるならば、「ブログで公表する」という行為は、当初黒木さんが行った、当該事業者や行政に対する要求行動の延長上にあり、その目的は同一であると考えられる。

ではその目的とは何か。

摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、その地域で生活をする多くの人々の健康を害し、生命を危険にさらす可能性のある重大問題である。また、農作物に与える被害、その後の風評被害などを想定すれば、地域にとっては死活問題にもなりかねない。

黒木さんが当該事業者に納得のいく対応や責任の所在を求めてきたこと、またそれを果たさない当該事業者に対し、行政機関による対処を求めてきたことの目的は、、明らかに地域の安全を確保する事にある。それは「地域の公益性を図ること」そのものであるばかりでなく、憲法13条に保障された「幸福追求権」に該当する国民が持つ権利の行使である。

さらに、ブログに何度も記述があるように、黒木さんが当該事業者に訴えている最たる要求は、「当該敷地内にあるフェロニッケルスラグの除去(ゴミは持って帰ってください)」に他ならない。仮に「ブログで公表する」事で当該事業所の名誉が毀損され、悪評が周知され、業績等に影響が出たとしても、それは黒木さんにとって何ら意味のない帰結であると理解されるべきである。

以上の考察から、適示行為「ブログで公表する」事は、公益を図る目的である。

また、黒木さんが「ブログで公表する」事で、摘示事実をより多くが知る事になり、「金属スラグの埋土問題」を広く一般に警鐘する結果となった。これが「一般の公益性」に寄与している事も指摘しておくべきである。

 ■■■

このケーススタディは僕の思いでもある…、書いていて、そう思った。ひょっとしたら完全に的外れな指摘かもしれないが、それでもこの記述を続ける価値は、僕にはあった。

すっかり長文になってしまったが、次回は③真実性もしくは真実相当性。

ようやくこのタイトルの本題に入れそうだ。


<③につづく>


2015年6月16日火曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ①



6月12日、黒木さんの5回目の裁判があった。

今回も当事者である黒木さんがブログを書いている。まだ(続き)との事なので、それを読み終えてから、僕も何か思うところを書こうか…、と思っていた。

ところがツイッター上で、従来から黒木さんを応援しているであろう方たちの間で、若干のミスリードが広がっていると感じた。こうした状況は、裁判を抱える黒木さんにもいい影響があるとは思えないので、急遽このブログを書いている。

結論から言うと、黒木さんの対応はそれほど間違ってはいない、と僕は思うのだ。


■名誉棄損裁判

まずは名誉棄損裁判について認識を共有したい。以下、何人かの弁護士さんのHPやWiki、僕自身が読んだ本のまとめ、過去の判例などを記述する。僕のsomethingは一切入っていない。とはいえ所詮は素人の覚書程度、そこは考慮いただきたい。

【 事実適示による名誉棄損が免責されるための抗弁3要件 】

① 事実の公共性
  摘示した事実が公共の利害に関する事実であること
② 目的の公益性
  その事実を摘示した目的が公益を図ることにあること
③ 事実の真実性、または真実相当性
  摘示した事実が真実であること、または真実であると信じるについて相当の理由があること

裁判はこの3要件を被告側が立証できるかに重点が置かれる。

この「真実相当性」について、最高裁判決に以下の記述がある。

「行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁 昭和44年6月25日)

また「真実性の立証」について重要なポイントがある。

「真実性の立証とは、摘示された事実が客観的な事実に合致していたことの立証であって、これを行為当時において真実性を立証するに足りる証拠が存在していたことの立証と解することはできないし、また、真実性の立証のための証拠方法を行為当時に存在した資料に限定しなければならない理由もない。」(最高裁 平成14年1月2日)

このポイントについて「真実相当性」の場合は以下。

「名誉毀損行為当時における行為者の認識内容が問題になるため、行為時に存在した資料に基づいて検討することが必要となる。」(同判決)

これは事実摘示行為を行った時点での認識と、その後判明した事実について言及している。「真実性」を立証する場合は、摘示行為を行った後に判明した事実が真実性の立証の証拠に成り得るが、「真実相当性」の立証の場合、それらは証拠とは成り得ない。



■ 黒木さんの裁判について考えてみる

僕は訴状も見ていないし傍聴にも行っていないので、裁判の中身について「あれこれ」言及出来る立場にない。なので、「ひとつの仮定」として、これからの話をすすめたい。これ以降の記述は、個人のケーススタディであると思ってほしい。

論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の一点に絞ってみた。

摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した

で、これを基に、抗弁の概念を図にしてみる。




逆に解かり難くなってしまったかもしれない…。(笑)

①②の立証は共通、③は「真実性」、つまり「フェロニッケルスラグの溶出有害」を立証する場合、ブログを公表した時点での認識や事実と、その後で知った事実の両方が証拠で使える。

逆に③を「真実相当性」でいくならば、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は立証できないが、そう信じるだけの確固たる証拠を提出する事になる。この場合は、ブログを公表した後で知った事実は証拠として使えない。

少し話が長くなったので次回に続ける事にする。

実際の裁判はいくつかの論点があるだろう。しかし今回のブログのポイントは「フェロニッケルスラグの有害性を立証するのは黒木さんだ」という主張に「待った」をかける事にある。

黒木さんの書いたブログは何ひとつ間違ってない。

そうは思わないか?


<②につづく>




2015年6月4日木曜日

「誇りある豊かさを」という言葉①




■尊厳と経済

5月20日、日本記者クラブにて翁長沖縄県知事の共同記者会見があった。

翁長知事は「辺野古移設が唯一の解決策だ」とする安倍政権を批判、基地建設阻止に向けて精力的な活動を続けている。自ら米政府に働きかけるため現在渡米中であることは承知の通りだろう。

その記者会見の中で翁長知事は大変興味深い言葉を提示した。

「誇りある豊かさを」

沖縄は長年、分断されてきた。経済中心の自民党保守派と基地反対の革新派が真っ向から対立する激しい選挙戦を展開していた。しかし、市民の内情はそう単純ではない。経済中心の保守派が「喜んで基地賛成だ」などとは思ってもないだろうし、基地反対の革新派が「カネなんていらない」とも言い切れないのが実情で、そのどちらかを選択しなければならない沖縄県民の心中は察するに余りあるものだったと思う。

ところがこの10年、中国をはじめアジア諸国の経済成長により沖縄経済もIT、観光、物流などを中心に今後大きな成長が見込まれる時代になった。「基地は沖縄経済の最大の阻害要因だ」と知事は言う。

「誇り」とは革新派が大事にしてきた人権や尊厳であり、「豊かさ」とは保守派が大事にしてきた経済や生活、その二つがやっと両立できる時代になった、それが「誇りある豊かさを」という言葉の意味だ。


沖縄が目指す「誇りある豊かさを」。

では、本土に住む僕たちは、はたしてこれを実現できているのだろうか?

僕は今、その事を一度考えてみる必要があると思うのだ。

「ここはフェロニッケルスラグ問題を考えるブログなんじゃないの…?」

少し遠回りになるが、話はそこに必ずたどり着く。

日本で起きる様々な問題、基本フレームはいつも同じなのだ。


<②につづく>