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2015年10月14日水曜日

僕とスラグと黒木さんの裁判

このブログ、約4か月ぶりの更新になってしまった。

もちろんその間、僕がこの問題について興味を失ったワケではない。安保法制国会があって、時間的にそっちに集中していたのは確かだけれど、僕はこの問題を忘れてはいない。


■「黒木さんを応援する」というポジション

今日10月14日、黒木さんの裁判についての判決が出る。


第一回の裁判は昨年の11月14日の事、時が経つのは実に早い。この間、本人裁判を選択した黒木さんの心中は決して穏やかではなかっただろう。

僕は黒木さんを応援している。

判決の内容にかかわらず、このポジションは変わらない。




■ スラグは埋土されたままだ

この11か月の間、金属スラグ関連で大きな動きがひとつあった。それは群馬県で起きた大同特殊鋼による有害鉄鋼スラグの問題だ。

再利用する鉄鋼スラグは「廃棄物」 群馬県、廃棄物処理法違反で告発
環境ビジネスオンライン 9月18日

群馬県は、大同特殊鋼渋川工場(群馬県渋川市)の製鋼過程で副産物として排出された鉄鋼スラグが建設資材として出荷されていた件で、総合的に勘案し、この鉄鋼スラグを廃棄物と認定した。

同社の鉄鋼スラグは、2002年4月から2014年1月までの間、関係者の間で逆有償取引が行われていた。逆有償取引とは、販売代金より多い費用を管理費・処理費等の名目で支払うものである。

また、この鉄鋼スラグは土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があった。同期間に出荷された鉄鋼スラグの総量は29万4,330トン。公共工事225カ所で使用され、このうち54カ所で土壌汚染が確認されている。

同県は11日、本件について、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき調査を行った結果を発表した。また同県は大同特殊および連結子会社の大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(群馬県渋川市)の3社を廃棄物処理法違反の疑いで県警察本部に告発した。(略)

東証一部上場企業の不祥事とあってか、マスコミは大きく報道しなかったが、大同特殊鋼には群馬県警の強制捜査も入っている、いずれ追加発表があるだろう。

もちろん、この事件と日向製錬所のフェロニッケルスラグ埋土は内容が違う。

しかし、「金属スラグの偽装リサイクル」が犯罪行為であることを明確にしたという点で、この事件の意義は大きい。きちんと立証できれば、大企業でも免れることはできないのだ。

黒木さんの裁判結果がどうあれ、スラグはあの場所に埋土されたままだ。また日向市内の別の場所には、「スラグ廃棄場」と呼ぶべき広大な山林の存在を、ネット上で明らかにしてくれた方もいる。

重要なのは、むしろこれからなのではないだろうか。




■ 「スラップ訴訟」を許してはいけない

日向製錬所の起こしたこの裁判は紛れもなく「スラップ訴訟」だ。訴状の中には、過去に黒木さんがとった抗議行動についての記述もあるように思われるが、それらは直接の目的とは言い難い。あくまで原告の目的は「ブログ、ツイッターでの発信を止めること」にある、これはスラップそのものじゃないか。

特に今回の様に、スラップとして名誉棄損裁判を起こされた場合、個人である被告の負担は膨大になる。なぜなら名誉棄損の場合、免責事由を被告側が立証しなければならないからだ。これが個人対個人であるなら費用負担等を考えると抑制も効くが、常時顧問弁護士を擁する大企業対個人になった場合、裁判にかかる負担の差は歴然で、はたしてこれが公正な裁判と言えるだろうか。

こんな卑劣極まりない「スラップ訴訟」を許してはいけない。


今日の判決が、宮崎県で唯一、公正なものであることを願う。


<おわり>


2015年6月22日月曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ③


黒木さんの裁判を、僕なりに考えてみたこのタイトルの3回目。

確認のため書いておくが、これは素人のケーススタディであり、何か真実を提示するような内容ではない。目的は「FNSの有害性を証明するのは黒木さんだ」という主張に「待った」をかけることにある。

ようやく、このタイトルの本題に入れそうだ。

【 訴訟の概要 】 
論 点    「フェロニッケルスラグの溶出有害」
摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した
名誉棄損免責のための抗弁3要件


■ 真実性
「摘示事実『山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した』が真実である」という抗弁をするためには、他にもいくつかの要素は予想されるが、最終的には「フェロニッケルスラグから有害物質が溶出する」ということ、つまり「フェロニッケルスラグの溶出有害性」を立証する事が不可欠になる。

「フェロニッケルスラグ本体」が争点になる、ということだ。



■ 真実相当性
では真実相当性の場合はどうなるのか、再び最高裁判決を見てみよう。

「行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁 昭和44年6月25日)

真実相当性の場合、立証するポイントは「確実な資料、根拠に照らした相当の理由」ということになる。摘示事実が真実かは問題にならない。

今回の件では、黒木さんが何を見て、何を聞いて、何を知ったうえで、摘示事実「山林にフェロニッケルスラグが埋土されて有害物質が流出した」をブログに書いたのか、その「根拠の相当性」を立証することになる。

つまり「ブログの記述」が争点、ということだ。


さらに付け加えると、真実相当性の場合「ブログを書いた根拠」がポイントになるので、ブログを書いた後に知った事実は証拠にならない。


 ■■■

「真実性」もしくは「真実相当性」、一聴ではその言葉に大きな違いはないが、実際の意味はまるで違うし、どちらを選ぶかで裁判の内容は大きく違ってくる。

どちらを選択すべきなのか…、それは次回に続けたい。

「黒木さんのブログにウソなんか書いてない」、僕はそう思っている。そんな黒木さんが罪に問われるなんて、オカシイだろう…

そうは思わないか?


<おわり>

2015年6月19日金曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ②




黒木さんの裁判について考えた、このタイトルの第2回目。

確認のため書いておくが、これは素人のケーススタディである。何か「正解」を導き出すような作業ではないことを、ご考慮頂きたい。目的は「FNSの有害性を立証するのは黒木さんだ」と言う主張に「待った」をかける事にある。


■ 訴訟の概要




こうした経緯で事態は名誉棄損訴訟になった。解かりやすいように、論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の1点に絞り、黒木さんの行為が名誉棄損でない事を立証するには、何をもって抗弁したら良いのかを、考えてみたい。

論 点    「フェロニッケルスラグの溶出有害」
摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した

名誉棄損免責のための抗弁3要件から、抗弁の概要は以下の通り。



■ 公共性、公益性

抗弁の3要件、①公共性②公益性③真実性もしく真実相当性。この3つをすべてクリアして、はじめて被告は名誉棄損から免責される。あらためて、この考え方はとても合理的だと感心する。

例えば、①公共性→摘示事実に公共性があって、③真実性→それが真実であっても、②公益性→つまり目的が私利や私怨に基づくものであれば名誉棄損は免れない。

また②公益性→目的が社会的な利益のためで、③真実性→それが真実であっても、①公共性→摘示事実が「相手のプライベイト」であれば、やはり免責されないのかもしれない。

今回の件では、「フェロニッケルスラグの溶出有害は真実か」という、「③真実性」ばかりに考えが行きがちだけれど、①公共性と②公益性の立証はそれと同じぐらい重要であることを、よく考える必要がありそうだ。


① 公共性 「フェロニッケルスラグの溶出有害」は公共の利益に関することか?

摘示事実、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、当該敷地内だけでなく、地域を流れる河川や地下水などを経由して、有害物質が広域に拡散する可能性を示している事は明らか。摘示事実は公共の利益に関する内容であると考えられる。

② 公益性 「ブログで公表する」事の目的は公益性を図ることか?

摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」を知った黒木さんは、当初、当該事業者、地域の役所や警察等の行政機関に何度も出向き、摘示事実に対して納得のいく説明や安全性の証明、もしくは公的な対処を求めたが、当該事業者からは十分な説明や解答を得ることはできず、また、行政機関による対処もなされることはなかった。

こうした状況を経て、黒木さんはそれに代替する手段として「ブログで公表する」事を選び、摘示事実を広く一般に周知させることで、当該事業者や行政機関に対して認識の刷新を促し、求めている解答や対応を得ようとしたと思われる。

であるならば、「ブログで公表する」という行為は、当初黒木さんが行った、当該事業者や行政に対する要求行動の延長上にあり、その目的は同一であると考えられる。

ではその目的とは何か。

摘示事実「フェロニッケルスラグの溶出有害」は、その地域で生活をする多くの人々の健康を害し、生命を危険にさらす可能性のある重大問題である。また、農作物に与える被害、その後の風評被害などを想定すれば、地域にとっては死活問題にもなりかねない。

黒木さんが当該事業者に納得のいく対応や責任の所在を求めてきたこと、またそれを果たさない当該事業者に対し、行政機関による対処を求めてきたことの目的は、、明らかに地域の安全を確保する事にある。それは「地域の公益性を図ること」そのものであるばかりでなく、憲法13条に保障された「幸福追求権」に該当する国民が持つ権利の行使である。

さらに、ブログに何度も記述があるように、黒木さんが当該事業者に訴えている最たる要求は、「当該敷地内にあるフェロニッケルスラグの除去(ゴミは持って帰ってください)」に他ならない。仮に「ブログで公表する」事で当該事業所の名誉が毀損され、悪評が周知され、業績等に影響が出たとしても、それは黒木さんにとって何ら意味のない帰結であると理解されるべきである。

以上の考察から、適示行為「ブログで公表する」事は、公益を図る目的である。

また、黒木さんが「ブログで公表する」事で、摘示事実をより多くが知る事になり、「金属スラグの埋土問題」を広く一般に警鐘する結果となった。これが「一般の公益性」に寄与している事も指摘しておくべきである。

 ■■■

このケーススタディは僕の思いでもある…、書いていて、そう思った。ひょっとしたら完全に的外れな指摘かもしれないが、それでもこの記述を続ける価値は、僕にはあった。

すっかり長文になってしまったが、次回は③真実性もしくは真実相当性。

ようやくこのタイトルの本題に入れそうだ。


<③につづく>


2015年6月16日火曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ①



6月12日、黒木さんの5回目の裁判があった。

今回も当事者である黒木さんがブログを書いている。まだ(続き)との事なので、それを読み終えてから、僕も何か思うところを書こうか…、と思っていた。

ところがツイッター上で、従来から黒木さんを応援しているであろう方たちの間で、若干のミスリードが広がっていると感じた。こうした状況は、裁判を抱える黒木さんにもいい影響があるとは思えないので、急遽このブログを書いている。

結論から言うと、黒木さんの対応はそれほど間違ってはいない、と僕は思うのだ。


■名誉棄損裁判

まずは名誉棄損裁判について認識を共有したい。以下、何人かの弁護士さんのHPやWiki、僕自身が読んだ本のまとめ、過去の判例などを記述する。僕のsomethingは一切入っていない。とはいえ所詮は素人の覚書程度、そこは考慮いただきたい。

【 事実適示による名誉棄損が免責されるための抗弁3要件 】

① 事実の公共性
  摘示した事実が公共の利害に関する事実であること
② 目的の公益性
  その事実を摘示した目的が公益を図ることにあること
③ 事実の真実性、または真実相当性
  摘示した事実が真実であること、または真実であると信じるについて相当の理由があること

裁判はこの3要件を被告側が立証できるかに重点が置かれる。

この「真実相当性」について、最高裁判決に以下の記述がある。

「行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁 昭和44年6月25日)

また「真実性の立証」について重要なポイントがある。

「真実性の立証とは、摘示された事実が客観的な事実に合致していたことの立証であって、これを行為当時において真実性を立証するに足りる証拠が存在していたことの立証と解することはできないし、また、真実性の立証のための証拠方法を行為当時に存在した資料に限定しなければならない理由もない。」(最高裁 平成14年1月2日)

このポイントについて「真実相当性」の場合は以下。

「名誉毀損行為当時における行為者の認識内容が問題になるため、行為時に存在した資料に基づいて検討することが必要となる。」(同判決)

これは事実摘示行為を行った時点での認識と、その後判明した事実について言及している。「真実性」を立証する場合は、摘示行為を行った後に判明した事実が真実性の立証の証拠に成り得るが、「真実相当性」の立証の場合、それらは証拠とは成り得ない。



■ 黒木さんの裁判について考えてみる

僕は訴状も見ていないし傍聴にも行っていないので、裁判の中身について「あれこれ」言及出来る立場にない。なので、「ひとつの仮定」として、これからの話をすすめたい。これ以降の記述は、個人のケーススタディであると思ってほしい。

論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の一点に絞ってみた。

摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した

で、これを基に、抗弁の概念を図にしてみる。




逆に解かり難くなってしまったかもしれない…。(笑)

①②の立証は共通、③は「真実性」、つまり「フェロニッケルスラグの溶出有害」を立証する場合、ブログを公表した時点での認識や事実と、その後で知った事実の両方が証拠で使える。

逆に③を「真実相当性」でいくならば、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は立証できないが、そう信じるだけの確固たる証拠を提出する事になる。この場合は、ブログを公表した後で知った事実は証拠として使えない。

少し話が長くなったので次回に続ける事にする。

実際の裁判はいくつかの論点があるだろう。しかし今回のブログのポイントは「フェロニッケルスラグの有害性を立証するのは黒木さんだ」という主張に「待った」をかける事にある。

黒木さんの書いたブログは何ひとつ間違ってない。

そうは思わないか?


<②につづく>




2015年6月4日木曜日

「誇りある豊かさを」という言葉①




■尊厳と経済

5月20日、日本記者クラブにて翁長沖縄県知事の共同記者会見があった。

翁長知事は「辺野古移設が唯一の解決策だ」とする安倍政権を批判、基地建設阻止に向けて精力的な活動を続けている。自ら米政府に働きかけるため現在渡米中であることは承知の通りだろう。

その記者会見の中で翁長知事は大変興味深い言葉を提示した。

「誇りある豊かさを」

沖縄は長年、分断されてきた。経済中心の自民党保守派と基地反対の革新派が真っ向から対立する激しい選挙戦を展開していた。しかし、市民の内情はそう単純ではない。経済中心の保守派が「喜んで基地賛成だ」などとは思ってもないだろうし、基地反対の革新派が「カネなんていらない」とも言い切れないのが実情で、そのどちらかを選択しなければならない沖縄県民の心中は察するに余りあるものだったと思う。

ところがこの10年、中国をはじめアジア諸国の経済成長により沖縄経済もIT、観光、物流などを中心に今後大きな成長が見込まれる時代になった。「基地は沖縄経済の最大の阻害要因だ」と知事は言う。

「誇り」とは革新派が大事にしてきた人権や尊厳であり、「豊かさ」とは保守派が大事にしてきた経済や生活、その二つがやっと両立できる時代になった、それが「誇りある豊かさを」という言葉の意味だ。


沖縄が目指す「誇りある豊かさを」。

では、本土に住む僕たちは、はたしてこれを実現できているのだろうか?

僕は今、その事を一度考えてみる必要があると思うのだ。

「ここはフェロニッケルスラグ問題を考えるブログなんじゃないの…?」

少し遠回りになるが、話はそこに必ずたどり着く。

日本で起きる様々な問題、基本フレームはいつも同じなのだ。


<②につづく>




2015年5月15日金曜日

ブログの記述と地権者の証言



4月24日、黒木さんの第4回目の裁判があった。

今回もまた、裁判を傍聴されたイワシさんのブログ(「鰯の独白」 4月24日(ワ)86号・89号 第4回審理(宮崎地方裁判所延岡支部))によって、その様子を知ることができた。毎度の事ながら、あらためて感謝申し上げたい。

また、黒木さんご自身も当日の様子をブログに記述している。(宮崎地方裁判所延岡支部 第四回口頭審理を終えて) こうしたブログは、検索すれば誰でも、どこででも見ることができる「記録」となる。これは大変重要な事だと、僕は思う。



■ 金属スラグのリサイクル

日本国内で大量に発生する金属スラグ、「今までどうしていたのか?」「今後、どうするのか?」、これは一歩間違えば大規模公害問題に発展しかねない極めて重大な問題だ。そして「金属スラグのリサイクル」はまさに今、業界と行政が取り組んでいる課題でもある。

しかし、僕も含めて大多数の市民はそんな問題の存在さえ知らない。

もちろん業界や行政の言うように、金属スラグに「バラ色の未来」が待っているのなら、僕たちとすれば、それに越したことはない。けれど、実態はどうなのか…。

黒木さんへのスラップ訴訟やネット上でのバッシングを見れば、そこに「大きな力」が介在していることは誰の目にも明らかだ。僕が先日ブログで書いた「室蘭の鉄鋼スラグ汚染問題」も、報じているのは赤旗だけ、一般マスコミでは一切報道がない。群馬の件は「八ッ場ダム建設問題」があるので、報道されてはいるものの、一地方の小さな問題に矮小化されてしまって、広く周知されてはいない。

「もしかして、これ宮崎だけの問題じゃないんじゃないの…??」

そう感じている方も少なくないのではないか。今後も同様の事態が起こるのではないか…、と。だからこそ、ブログの記述は大変重要だと僕は思う。ひとつひとつの問題は地元の圧力によって、一時的には封印できるかもしれない。しかし、今は「点」でしかないこうした記録は、いずれ「線」になって繋がってくる、それがネットワークの可能性ではないだろうか。



■ 地権者の証言

ところで黒木さんの裁判、今回も僕には「目から鱗」的な驚きがあった。

裁判長「では、被告の方は」
はい、ここで恒例の黒木さん質問コーナー。
「尋問、といいますと?」
しかし裁判長は、前回のように焦れたりはしなかった。
「尋問というのはですね、当事者に事実を立証してもらう、ということです。当事者に、証人になってもらうことですね」
黒木さんは、「わかりました。地権者を」
(「鰯の独白」より)

… ええっ、地権者に証言させるの!

僕の認識では、原告側の主張は「黒木さんのブログの内容は事実と違う」であり、黒木さんは自分のブログの内容が間違いではないと主張する必要がある。

地権者たちは「土地造成」を依頼した土地の管理責任者。どちらかといえば原告側の立場のはずであり、「黒木さんのブログに間違いはありません」などと証言するとは思えない。おそらく弁護士たちと入念な打ち合わせをして、黒木さんもビックリするような作り話を並べ立てるに違いない…、僕は最初にそう思った。

しかし、しかし…、作り話を並べれば、それは「偽証罪」になる。

もし地権者たちが裁判に出てきたなら、黒木さんは納得いくまで彼らに質問することができる。裁判の証言でウソを重ねるには相当の度胸が必要だ、作り話は必ずボロが出る…、そんな展開にならないか、と期待したい。



… ところで、どうして地権者は裁判を起こさなかったんだろう…???

僕はそんなことを考えた。仮に黒木さんのブログが事実でないのなら、迷惑を被るのは地権者も同じだろう。今回の裁判は日向製錬所とサンアイが仕組んで起こしたものであることは明らかだ。そこに地権者が加わってもおかしくはない。

やはり地権者たちも、喜んでフェロニッケルスラグを受け入れたわけではないのではないか…。これは僕の淡い期待なのかもしれない。

地権者たちにもどこか、良心の呵責が残っていないのだろうか?



地権者たちは裁判に出て、事実を証言してほしいと思う。

「製錬所に頼まれて、ダストを埋めさせてやった。」

誰かがどこかで止めないと、子や孫の世代で、また同じイヤな思いをする人間が出る。日向の里は、あっという間にフェロニッケルスラグで埋め尽くされてしまうだろう。そして、もし有害物質が出てしまっても、私有地に行政が手を差し伸べることはない。その時、どうするんだ?

「フェロニッケルスラグはゴミだ。」

これは地元の住民の間では当たり前の認識ではないのか?ならば、排出元の日向製錬所が起こした裁判は、そんな地元の声を抹殺しようとする最低の「スラップ行為」だ。こうして書いていても、怒りが湧いてくる。

地権者たちよ、勇気をもって声を上げてくれないか。

なぜ山林を造成したのか…。



2015年4月6日月曜日

その昔、室蘭で。②





室蘭市で起きた鉄鋼スラグによる土壌汚染問題。

昨年の10月、参議院環境委員会で行われた共産党 市田忠義議員の質疑応答によって、その実態の一部が明らかになった。今回はその内容について考えてみたい。


■ 鉄鋼スラグの事は知っていたはず。

質疑応答の中には3つの場所が出てくる。

① 消防署建設予定地(登別市)
新日鉄住金(当時の新日鐵室蘭)が低湿地に鉄鋼スラグを埋立し、1996年に登別市に売却、その土地を市が自主的に土壌調査したところ土壌環境基準を上回るフッ素が検出された。市は消防署建設を断念、土地は民間への売却を検討中。

「どうして市は購入前に土壌調査しないの・・?」

僕は単純にそう思うのだが、皆さんはいかがだろうか。もちろん登別市はこの土地に鉄鋼スラグが埋め立てられていることを知っていたはずだ。さらに、フッ素が出たこの土地、消防署はNGだけど民間はOKということ…?質疑応答だけでは分からない部分もあるとしても、ずさんな土地取得計画なのか、あるいは何がしかの意図が働いているか、そう考えてもおかしくはない。

② 旧東中学校跡地(室蘭市)
室蘭市の所有するこの土地をイオンに売却するにあたり、市が事前に自主的な土壌調査を実施した結果、土壌環境基準を上回るフッ素が検出され、地下に大量の鉄鋼スラグが埋土されていることが判明した。結局、市は鉄鋼スラグ除去費用(1億5千万円)を負担する形で売却。

「旧…、という事は、中学校があった、ということ…??」

正確な経緯は分からないが、この土地も新日鉄住金が鉄鋼スラグを埋土して造成、それを室蘭市が購入して東中学校を建設、その学校が廃校になり…、そんな事なのだろうか?それにしても1億5千万円、室蘭市は随分と財政に余裕がある自治体だ。

③ 八丁平(室蘭市)
1963~74年まで新日鉄住金が鉄鋼スラグの処分場として使用、170万tのダスト(鉄鋼スラグ?)が埋土された後に、室蘭市(もしくは新日鉄住金)が造成、1986年に区画整理されて、新日鉄住金社有地、室蘭市の市有地、公園、および民間住宅になった。最近の土壌調査で土壌環境基準の1400倍を超えるヒ素、23倍の鉛が検出された。


いずれにしても、新日鉄住金が鉄鋼スラグを埋土した土地を、市が無条件で購入し、その後の調査で土壌汚染が発覚した、という同じパターンだ。もちろん市は鉄鋼スラグの存在を事前に知っていて購入したのは明らかであり、厳しい目でこの事態を考察すれば、「後で何かあったら市で(つまり税金で)ナントカしますよ。」的な了解が、新日鉄住金と市の間に存在し、当然そこに、企業、行政、そして議会の癒着、つまり金銭等の利益供与があった可能性を疑わなければならない。



■ OK、OK、OK。

市田忠義議員の質疑応答には室蘭市議会のやりとりが出てくる。
「これは法成立以前に埋め立てたんで、だから適法なんだと盛んに言っているんですよ。」

… この人たちはいったい何を考えてるんだろう・・・?

ここ十数年、中国の工業化が進み、その結果発生した大気汚染等の環境汚染問題を、日本のマスコミが「これ見よがし」的に取り上げている。環境分野ではまだまだ日本がリードしてるよ、と言いたいのだろう。

確かに「目に見える部分」、大気や海、川などの汚染は明らかに少なくなった。しかし、どうだろう、「目に見えない部分」について、この国はまるで別人格のように無頓着ではないだろうか。見えなきゃOK、誰が捨てたか分からなければOK、何かあっても、誰かが何とかしてくれるからOK、じゃないと、会社がやっていけないんだよ…、そんな声が聞こえてきそうだ。

「健康被害が出てないからOK!」

一体、いつになったらこの発想から抜け出せるのだろう。

この国は過去に、有害物質によって深刻な健康被害(公害病)を発生させ、多くの人間の人生を毀損させたという経験がある。しかし残念ながら、そうした経験から「人として当然持ち得るであろう」反省や倫理観、そして危険感受性を獲得する事ができなかった。これは個人の感性の問題だ。

はたして、僕たち個人の感性は、現在手にした技術と同じレベルで発達したと言えるだろうか。「見えなきゃOK」「死ななきゃOK」のレベルで、他国の事を揶揄する資格はあるのだろうか。

さらに、そうした個人の感性を捨て去り、善悪を判断することを放棄して、「損得勘定」に乗じてしまう人間が、この国のスタンダードになっている。

室蘭市の市会議員たちが「適法だ」などと妄言を吐くのは、企業の味方になったほうが得だからだ。個人の内発性の源泉である重要な感性を完全にロストした、まさに「人間のクズ」だと僕は思う。

こうした人間に何の価値も見出すことはできない。


<③につづく>


2015年3月27日金曜日

その昔、室蘭で。①





環境汚す新日鉄住金」 

先日、僕はこの「赤旗」の記事をツイートした。鉄鋼スラグを埋立した土地が土壌汚染を引き起こし、多大な損害を出している…、という話、それ程長い記事ではない。

ところがその後、どうも気になって、国会での市田忠義議員の質疑応答を知りたくなり、その議事録を探し出して読んでみたのだ。

そしてもう、その内容にはビックリ…。

日向市の「フェロニッケルスラグ産廃問題」に関心がある皆さんには、是非ともこれを読んでほしいと思い、解かりやすい表記にしてブログに掲載することにした。


■ 深刻な土壌汚染が今になって発覚

今から50年近く前、まだ廃掃法が整備される以前に、室蘭市の新日鉄住金は鉄鋼スラグを自社所有地に直接埋土していた。その後、新日鉄住金はその土地を自治体に売却、造成、区画整理されて、その大部分が使用されている。

ところが、最近の土壌調査で深刻な土壌汚染が発覚、特に八丁平という住宅地近くの公園では、基準の1400倍にも上るヒ素が検出された…、という話だ。


■ 質疑応答からみえてくるもの

以下に議事録の一部を全文掲載する。これね…、長くて時間もかかるかもしれないが、ぜひ読んでほしいと思っている。市田忠義議員の質問はとても解かりやすく、読んでいて質疑応答の様子が目に浮かぶようだ。

新日鉄住金といえば、当時の新日鐵室蘭、室蘭市の王様企業である。質疑の中では汚染の実態と共に、企業の姿勢や北海道庁、地元の議会、そして環境省の対応など様々な「ニュアンス」が見えてくる。

「フェロニッケルスラグ産廃問題」が起こった、その背景が連想できると思う。






第187回国会 環境委員会 第2号
平成二十六年十月十六日(木曜日)

(廃棄物処理法施行以前の産業廃棄物埋立処分による土壌汚染問題に関する件)

国務大臣  環境大臣
      (内閣府特命担当大臣(原子力防災))  望月 義夫
委員長                       島尻安伊子(自民党)
理 事                       市田 忠義(共産党)
環境大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長       鎌形 浩史
環境省水・大気環境局長               三好 信俊
厚生労働省労働基準局安全衛生部長          土屋 喜久


http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/187/0065/18710160065002a.html


○市田忠義君 
 日本共産党の市田です。今日は、環境問題と大企業の社会的責任という問題について、幾つかの事例を挙げながらただしたいと思います。

 最近、鉄鋼スラグやダストが土壌汚染を引き起こして、ヒ素、鉛、あるいは水銀、フッ素などが基準を超過して検出されて、その原因の究明と汚染対策が求められると、そういう事態が各地で起こっています。廃棄物処理法第三条は事業者の責任について、「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と、こう規定しています。この法律が施行されたのはいつでしょうか。

○政府参考人(鎌形浩史君)
 廃棄物処理法につきましては、一九七一年、昭和四十六年に施行されております。

○市田忠義君 
 私、先日北海道に行って、産業廃棄物になっている鉄鋼スラグなどによる土壌汚染問題を調査をしてきました。

 まず、登別市の市内、緑町というところの消防署建設予定地から土壌環境基準を超えるフッ素が検出をされました。そのために、登別市は消防署の建設を断念をして、民間への売却を今検討しています。元々、この土地は新日鉄室蘭製鉄所が低湿地、低いところの湿地ですね、この低湿地を鉄鋼スラグなどで埋め立てて一九九六年六月に登別市に売却したものであります。その結果、登別市に多額の損害を与えることになりましたが、売却の際、新日鉄室蘭側が産業廃棄物である鉄鋼スラグが埋まっているということをきちんと説明しないで登別市に売却していたとしたならば、新日鉄室蘭側の説明責任を私、問われると思うんですが、環境省、いかがでしょう。事務方で結構です。大臣にはまた後で聞きます。

○政府参考人(三好信俊君)
 先生お尋ねの北海道登別市の事案、土壌汚染対策法を担当しております北海道庁に確認をいたしました。登別市が消防庁舎建設予定地として新日鉄住金株式会社から購入した土地について自主的に土壌調査を同市が実施したところ、フッ素の基準超過を確認したということでございます。  

 それで、当該土地の汚染の原因でございますけれども、汚染の原因が特定できていないということでございまして、御指摘ございました過去に鉄鋼スラグを埋設していたという事実はございますけれども、それの使用者は不明ということでございます。また、汚染がフッ素ということでございまして、以前には低地ということで海水の浸入のあった可能性がある場所というふうに承知をいたしているところでございます。

○市田忠義君 
 これ、売却九六年なんですね。新日鉄室蘭による埋立地であることはもう明白になっておるわけですから、当然新日鉄側には説明責任があると。

 この登別市の消防署建設予定地と地続きになっている室蘭市の旧東中学校跡地、ここを室蘭市が民間企業であるイオンに売却しようとして土壌調査をしました。そうしましたら、環境基準を超えるフッ素が検出をされ、地下に鉄鋼スラグが大量に埋められているということが判明しました。この結果、室蘭市は五億七千万円で売却の予定、これイオンに売却しようとする予定だったんですが、鉄鋼スラグの処理料として一億五千万円を値引きして民間企業に売却せざるを得なかったと。この土地も新日鉄室蘭の鉄鋼スラグによって埋められていた場所であります。

 ここでも室蘭市は多額の損害を被ることになったわけですが、少なくともイオンには、産業廃棄物である鉄鋼スラグの説明責任を市の側が果たして処理料を減額するということで損害を与えることはありませんでした。しかし、室蘭市がこの土地を取得した際、新日鉄から、鉄鋼スラグが埋められているという説明を受けていなかったとしたら、これも私、新日鉄室蘭側が説明責任を果たしていないと、この責任を厳しく問われると思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(三好信俊君)
 先生お尋ねの室蘭市旧東中学校跡地でございますけれども、室蘭市が、御指摘のとおり、売却に先立ちまして自主的に土壌調査を行った結果、フッ素の基準超過を確認したということでございます。同じく、原因について道庁に確認をいたしましたが、この土地につきましては、汚染原因につきましては、御指摘の鉱滓、鉄鋼スラグを同中学校建設の路盤材として使用していたことが原因ではないかということでございますけれども、その鉱滓がどこから発生したものであるかということについては確認ができていないということでございます。

 御指摘のとおり、室蘭市は鉱滓の除去費用相当額を差し引いて売却済みというふうに承知をいたしております。

○市田忠義君
 尋ねていることに答えていないですよ。新日鉄室蘭側がきちんとその土地を売却するときに、そこはそういうもので埋め立てた場所だよということをちゃんと説明する必要があったんじゃないかと。そういうことを知っていたら、そこを消防署の予定地にしたりする必要はなかったわけで、そういう損害を市として被っているわけですよ。

 それは、あれですか、今の答弁だと、新日鉄室蘭には何の責任もないという立場ですか、環境省は。

○政府参考人(三好信俊君)
 原因者についてのお尋ねというふうに考えておりますけれども、汚染原因、一点目で御指摘の消防庁舎建設予定地でございます登別市に関しましては、土壌汚染対策法を所管いたしております北海道庁に確認いたしましたところ、汚染原因が特定できていないということでございます。そういうことで、そのように対応していく必要があるというふうに考えております。

○市田忠義君
 じゃ、汚染原因はちゃんと解明させるんですね。重要な環境問題が起きているわけですから。登別市や室蘭市、大変な損害を被っているわけですよ。汚染原因きちんと解明しなさいという指導はやる予定ですか。

○政府参考人(三好信俊君)
 土壌汚染対策法上、原因者の究明までは求めておりませんけれども、土壌汚染対策で費用が発生した場合に、所有者が一義的には土壌汚染対策を取りますけれども、必要な場合には原因者から費用負担を求めることができることになっておりまして、そういう土壌汚染対策法が北海道庁において適切に運用されるべきものと考えているところでございます。





○市田忠義君
 じゃ、大臣の認識を問いたいんですけれども、私が調査したのでは、新日鉄室蘭は、産業廃棄物である鉄鋼スラグを低湿地に埋め立てた土地を造成して、そのことを説明しないで自治体などに売却してきた。購入した自治体が公舎の建設や民間への売却の際にその土地を調査したところ、土壌汚染が発見されて多大な損害を被ったと。少なくとも、新日鉄室蘭が自らの責任で産業廃棄物を適正に処理をして産業廃棄物が埋め立てられているという説明責任を果たしていたならば、こういう土壌汚染や多大な損害を自治体と住民に与えるということは私なかったんだと思うんですね。この点について、大臣の認識、どうでしょう。

○国務大臣(望月義夫君)
 一般的に、事業者というものは、その事業活動を行うに当たって、公害の防止や自然環境の保全等のために必要な措置を講ずることを求められていると考えております。ですから、このような環境負荷の低減の取組により社会的責任を果たすとともに、その取組の内容について説明責任を果たすことは非常に重要であると、このように思っております。

○市田忠義君
 大臣の方がしっかりした答弁ですよ。

 民法の五百六十六条の規定でも、契約の解除又は損害賠償の請求は買主がその事実を知ったときからとされているんですね。ところが、室蘭市も、私、市議会の会議録を読んでみましたら、これは法成立以前に埋め立てたんで、だから適法なんだと盛んに言っているんですよ。だから、適法だったら大企業は何やってもいいのかと、そういうことが問われているときに、後でもちょっと触れますが、住宅地や公園とかそういうところも実は新日鉄の鉄鋼スラグなんかで埋め立てられていたというので今大問題になっているから私そういうことを聞いているわけです。

 室蘭市は、新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて鉄鋼ダストなど産業廃棄物処分場として埋め立てていた八丁平というところがあるんです。新日鉄室蘭はこの処分場の上に土地を造成した。そして、この土地が一九八六年に区画整理をされて、新日鉄室蘭の社有地、それから室蘭市の市有地及び公園、民間住宅などが造成をされました。最近、室蘭市の開発構想に伴ってこれらの土地を調査をしたら、いずれの土地からも基準を超える有害物質が検出されたと。特に、私調べて驚いたんですが、公園からは基準の千四百十倍のヒ素、二十三倍の鉛が検出されました。  

 まずお聞きしますが、この土壌汚染は新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて約百七十万トンのダスト等を埋め立てたために起こったことであると、これは間違いありませんね。事務方で結構です。

○政府参考人(三好信俊君)
 お尋ねの室蘭市八丁平の市有地の土壌汚染でございますけれども、先生御指摘のとおり、土壌調査を同市が実施いたしましたところ、水銀、鉛、ヒ素及びフッ素の基準超過を確認したということでございます。

 その土地につきましては、昭和三十八年から昭和四十九年にかけまして、新日鉄住金、これは現在の名前でございますけれども、により廃棄物等が埋め立てられていたというふうに承知をいたしているところでございます。ただ、その後、市が造成ということでその土地に手を加えておりますので、どの程度新日鉄住金の廃棄物が原因となっているかどうかということにつきましては灰色の部分があるというふうに考えております。

○市田忠義君 
 そこまで新日鉄を別にかばう必要はないんですよ、あなた。
 
 私聞いたのは、その埋立地は、市の調査報告書を見ても、あなたが冒頭答えたように、この土壌汚染は新日鉄室蘭が一九六三年から七四年にかけて約百七十万トンのダスト等を埋め立てたために起こったことであると、ちゃんと市が委託した調査報告書の中にそういうふうに報告しているわけですから、原因はもう明白だと。あれこれほかのことを言う必要ないんです。新日鉄室蘭が自分の会社の所有地に自らの責任で適正に処理して管理をしておれば、こういう土壌汚染は私は発生しなかったと思うんですね。

 新日鉄室蘭が、廃棄物処理法第三条で規定されている、「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」、これに基づいて自らの責任で産業廃棄物を適正に処理していたとは私は到底言えないと思うんですが、これは環境省の認識はいかがですか。

○政府参考人(鎌形浩史君)
 廃棄物処理法の適用の関係ということでございますけれども、先ほどお答え申しましたとおり、廃棄物処理法は昭和四十六年に施行されているということでございます。ですから、当該埋立てがどの時点で行われたかによって適用関係が異なってくるというふうに思います。そういう意味で、昭和四十六年の施行以前にその埋立ての処分が行われた場合には廃棄物処理法の適用を受けないということになります。

  ただ一方で、昭和四十六年の廃棄物処理法施行後にその鉄鋼スラグの埋立処分が行われた場合でございますけれども、先生のおっしゃる事業者の責任というところの条文も適用になろうかと思いますし、また、基準の面でも、そのスラグがいわゆる有害鉱滓に該当すると認められる場合には公共の水域及び地下水と遮断された場所に埋め立てる、こういった基準がございました。さらに、その基準につきましても、昭和四十八年に改正がありまして、何が有害鉱滓に当たるかということについて、一定の基準を超える重金属が含まれる場合と明確化されて、その有害鉱滓に当たる埋立てが行われた場合には廃棄物処理法に問題があると、こういうことだというふうに認識しております。

○市田忠義君
 法律施行は一九七一年だと。それ以前に埋立てをやっていたか以後でやっていたかで適法かどうかというのは違うというお話です。

 私、適法かどうかということももちろん法律上は重要だと思うんですけれども、法の施行以前であったとしても、現にそこに住んでいる住民やあるいは住宅地や公園やその他が汚染されているとすれば、これは極めて重大であるわけで、適法かどうかということだけで環境省として私判断してはならないと思うんですが、この辺は政治的な判断だと思うので、大臣、いかがですか。

○国務大臣(望月義夫君)
 今先生お話ございましたが、一般的に廃棄物処理法、事業者はその事業活動に伴って生じた産業廃棄物を自らの責任において適切に処理しなければならないこととなっております。したがって、自社で発生した産業廃棄物について自社敷地内で処理を行う場合であっても、廃棄物処理法に規定する基準に従って適正な処理を行うことが当然必要であると考えております。

 今先生のおっしゃった廃掃法の、今のお話の中で廃掃法のその処理の、法律の前後で考えますと、この法律の前は内容はゆるゆるのものであって、今になってみればもっと早く作っておけばよかったなと先生のおっしゃる、指摘されるのはそのとおりだと思います。

 ただ、一般的には、その法律の前に遡及するというもの、法律というのは一回決まりますとその前に遡及することはなかなかありませんが、しかし、企業というもの、これ社会的責任というのは十分に、先ほどから私申しましたように、あると思いますので、そういった意味で社会的責任を感じてしっかりと対応すると。我々も、そういう意味ではそこを見守るといいますか指導するといいますか、そういう形はあると思います。

○市田忠義君
 法規制以前の問題としてやっぱり責任を回避してはならないと。大企業の廃棄物処理、土壌汚染対策にはやっぱり重大な問題点があるということを指摘しておきたいと思うんです。

読了、お疲れさまでした。

中身の話は、もちろん次回に。

<②につづく>



2015年3月6日金曜日

証拠とロジック、僕の感性。




3月4日、黒木さんの3回目の裁判があった。

今回も、裁判を傍聴されたイワシさんがブログ(鰯の独白「3月4日宮崎地方裁判所延岡支部第1法廷 第3回審理」)にその様子を記述してくれた。前回同様、大変感謝している。

こうした記述によって、裁判の内容が多くの方に伝わることの意義は大きい。

もちろん記述すること自体が判決に影響を及ぼすものではないが、裁判の公正性を担保するのは多くの「第三者」の視点なのだ。民主主義の原点を感じさせてくれる。そして、こうした行為が何より黒木さんの力になるに違いない。

黒木:「裁判長。裁判長はどういうふうに思われましたか?」
裁判長:「どういうふうに、とは?」
黒木:「私の書いた陳述書を、裁判所はどう思ったかを教えていただきたいのです」
  すると裁判長は、あきらかに困惑した。   (鰯の独白より)

僕はこのやりとりに「目から鱗」的な、ちょっとした衝撃を受けた。

この裁判が始まってからというもの、やれ訴状が…、やれ証拠が…、そんなツイートをイヤというほど見てきた。もちろん裁判なので、法とロジック、そして証拠が重要な事は間違いない。

ところが、黒木さんは陳述書に記載した自分の行動について、裁判長に主観というよりも、むしろ「人としてどう思うか」みたいな質問をしたのだ。まさか裁判長もこんな質問をされるとは思わなかっただろう。

 ■■■

僕はふと思い出した、彼女のツイートを見かけた1年前の事だ。

「ゴミは持って帰って、自分の前に積んでください。」

タイムラインを流れる数々のツイートの中で、彼女のこうした訴えは異色だった。僕が日頃接している一連の文脈とは、明らかに違うものだった。

それに添付された画像。

切り開かれた山中に投棄される、永久に馴染むことのなさそうな緑色の砂。

… これはゴミだろう・・・。

僕たちにはそれを感じるセンサーがある。有価物とか廃棄物とか、そんな何かの理屈で造られた単語を並べる前に、「人として」善悪を判断する感性がある。

彼女の言葉は、そこに訴えてくる。

「裁判長はどういうふうに思われましたか?」

黒木さんのスタンスは何も変わっていない。

 ■■■

「偽装リサイクル」は偽装されている。

なので、「偽装リサイクル」をしている者は、声高々に「これは合法だ」と言えるロジックを持っている。「偽装リサイクル」は常に合法の中に存在するのだ。

これを看破する最初のステップは、僕たちに備わっている感性だ。

ダメな事は、ダメ。まずはそこからだ。


<おわり>



2015年2月23日月曜日

「造成工事」と称されるもの。②

「造成工事」と称されるもの、それは安定型最終処分場ではないのか…?



■ 3種類の最終処分場

廃棄物を埋立する最終処分場には次の3種類がある。

① 管理型最終処分場

最も一般的な最終処分場で、底部、側面には遮水シートを敷く等の「遮水工事」をして、さらに浸出水を集水して無害化できる汚水(浸出液)処理設備が必要である。

基本的にフェロニッケルスラグは「金属鉱さい」なので、処分する場合、この管理型最終処分場で最終処分しなければならない。

② 遮断型最終処分場

有害物質(重金属等)を含む産業廃棄物で、固化処理など、不溶化対策ができないものに適用する。上部には屋根を設け、側面、底部はコンクリートで完全に遮断する。また埋立終了後はコンクリートで完全に蓋をする。

「金属鉱さい」においても、基準を超える有害物質が検出される場合には、この遮断型最終処分場にて最終処分しなければならない。

③ 安定型最終処分場

ガラス・陶磁器くず、金属くず、廃プラスチック類、建設廃材、ゴム類など「安定5品目」に限定されていて、埋立による浸出水がない事が前提となっている。構造的には、崩壊を防止するえん堤を設ければよい。つまり安定型最終処分場は「穴掘って埋めちゃえ」方式、直接埋土なのだ。

法律には「安定5品目」に加えて、「環境大臣が指定したもの」という6番目の項目がある。僕はこの点について環境省に電話で確認した。スラグ化した金属鉱さいであっても、現在この「環境大臣が指定したもの」にはなっていないそうだ。

 ⇒「日本産業廃棄物処理振興センター


■2つの問題

ここで確認しておかなければなない事が2つある。

まず、フェロニッケルスラグは安定型最終処分場で埋め立て処分することはできない。言い換えれば、「直接埋土してはいけない」ということになる。「遮水処理+汚水処理設備」、場合によっては「完全遮断」すべき物質、ということだ。

ところが、これを事業者は直接埋土している。

まったく同じ物質が、「製品であれば直接埋土可能」である一方、「廃棄物であれば直接埋土不可」という扱いになっている。これは完全な矛盾ではないか。

そしてもうひとつ。

最終処分場はその設計から運用、跡地利用に渡って「永久管理」が必要になる。何かがあった場合、誰かが対処する責任が永久に続く、ということだ。

そのため最終処分場の運営は、公営もしくは都道府県が許可した民間事業者に限られている。産業廃棄物の場合は民間事業者=産廃事業者が行うわけだが、都道府県はこの産廃事業者に対して強い監督権限と指導責任をもっている。

ところが「造成工事」の場合、地権者が大量のフェロニッケルスラグを購入した事になる。つまり、その責任はすべて所有者である地権者にある、ということだ。

僕の主観では、この「造成工事」は安定型最終処分場に酷似している。

これを個人が「永久管理」しなくてはならないのだ。


(ダンプカーの大きさを考えると、どれだけ大量のスラグが埋まっているか…)

  ⇒「その土地はどこへ
  ⇒「無過失責任


<③につづく>


2015年2月17日火曜日

「造成工事」と称されるもの。①



「事業者はこれを『造成工事』だと主張している。僕にはそうとは思えない。」


■ 「引っ掛かり」

僕は何度か、同じようなツイートを繰り返してきた。覚えている方もいるかもしれない。「これは造成工事だ」とする業者側の言い分に、何か「引っ掛かり」のようなものを感じていたからだ。

このブログでも、「土地造成した場合の地権者のリスクや責任」について、自分なりに思いつくことを書いてきた。なにか矛盾点が引き出せるのではないか…、そんなつもりで、様々な想定をして疑問点を並べていくつもりでいた。

しかし、その試みは12月に止めてしまった。

理由の一つは、事業者が「造成工事だ」と主張する以上、その主張に合わせた「証拠書類」は揃っているに違いない、ということだ。

黒木さんのブログを読むと、事業者、地権者共に、商取引について話の整合性が取れていないことがわかる。しかし、彼らも訴訟するにあたって、辻褄が合うストーリーを設定し、それを裏付ける証拠書類を用意してくるであろうことは、容易に想像できる。さらに、そのストーリーをベースに「黒木さんの書いたブログは虚偽だ。」という戦術に出てくることも、想像に難くない。相手にしているのは地元の大企業と自治体だ、準備に抜かりはないだろう。

そして、もう一つの理由、僕の「引っ掛かり」は疑問へと変わったからだ。


■ 沈殿池

黒木さんのブログには「沈殿池の水から有害物質が検出された」ということが書いてある。実を言うと、僕はこの「沈殿池」を、自然にできた水溜りのようなものだと勝手に想像していて、それ以上何も気にしていなかった。

ところが、三浦ばんしょう氏が開設した「日向製錬所産廃問題ネットワーク」のブログに掲載されていた「沈殿池」の画像を見て、僕の想像が全くの見当違いだったことに気付かされた。

「沈殿池」とは、浄水などの目的で造られた「設備」なのだ。


沈殿池(ちんでんち) コトバンクより
鉱業廃水や工場廃水に微粒の固形物を含む場合,それを沈降させて水を清澄化する役目を果す池。清澄化された水は用水として再使用するか河川へ放流する。沈殿池は沈殿物を運び出す都合上,底を水平にしセメントモルタル張りとするのが普通である。

(以下、画像は「日向製錬所産廃問題ネットワーク」よりお借りします。)


(画像1 沈殿池 人の背丈ほどの深さがある)


… なんで、こんなものが必要なの…??

この「沈殿池」という名称は、黒木さんがそう呼んでいるのであって、その所以が分からない状態では、この設備を「沈殿池」と決めつけるには無理がある。過去に事業者の誰かから、そう説明を受けたのであれば確証は高いだろう。

もちろんこの設備が、治水対策のための「調整池」である事も考えられる。


(画像2 段差部分 雨水対策のパイプが設置してある)



■「造成工事」と称されるもの。

昨年の夏ごろから、僕は、ヒマを見ては「フェロニッケルスラグ検索」に明け暮れていた。しかし、僕の検索力や語学力では、「フェロニッケルスラグは有害だ」と確定できるような書類をネット上で見つけることはできなかった。

… こういう時は図書館だな。

そう思いたったのは11月、実際に足を運んではみたものの、東京近郊の図書館で「フェロニッケルスラグって何?」的な本など置いているはずもない。「ま、そうだよな・・。」などと自嘲しながらも、「鉄鋼スラグの製造法」や、その他、何冊かの本を手にすることができた。



そして僕は、ある本に載っていたイラストに目を奪われた。


(画像3 安定型最終処分場の見取り図)


… 安定型最終処分場・・・?




ここからは、僕の主観による推測と疑問を記述する。

この見取り図は、彼らが「造成工事」と称するものに酷似している。

見取り図左下に「雨水などの排出設備」との記述があり、図中には雨水を下流に流す溝が設けられている。これが、画像2で見られるパイプとまるで同じだ。

また見取り図中央右に「浸透水採取設備」、右下には「地下水の水質検査」とある。画像1の「沈殿池」はそれを簡易的に代替する用途で設置されているのかもしれない。浸透水の水流を考えると、位置的にも当てはまりそうな感じだ。

見取り図右、グレーで示された「貯留構造物」、これは「土留め」になるのだろう。

「造成工事」には、この「土留め」は設置されていない。その代り、傾斜壁にすることで土砂崩れを起こしにくくしている。この土地の地形に対して、埋土するフェロニッケルスラグの容積が少なかったか、もしくは、土留め設置の工事費用を削減するためか…、そんな理由が自然と思い浮かぶ。




「造成工事」と称されるもの…。

これは安定型最終処分場なのではないのだろうか?

そう思ったとき、僕の「引っ掛かり」は、ひとつの疑問へと変わった。




(画像4 全体が見渡せる どれだけのフェロニッケルスラグが埋まっているのだろう)


<②につづく>




2015年2月9日月曜日

自公政権が作ったSLAPP社会



2月4日、日向製錬所他による黒木さんへの訴訟について2回目の公判が開かれた。

その様子について、公判を傍聴された方のブログ(鰯の独白「2月4日宮崎地方裁判所延岡支部1号法廷メモ」)に、とてもわかりやすい秀逸な記録が記述されている。遠距離にいて、なかなか公判に出向くことができない僕のような人間にとって、こうした記録は大変有難いものであり、ブログ主に感謝を申し上げたい。

今回の黒木さんに対する訴訟は明らかなSLAPPだと僕は思っている。

そして、こうしたSLAPPが出版社やジャーナリストに対してだけでなく、ブログで「ゴミ問題」を訴えた1個人にまで及ぶ現象、これは明らかに異常事態である。この潮流をどこかで止めなければ、行き着く先の社会は暗澹としたものになってしまうだろう。

では、こうした異常事態いつから始まったのか…。

それを明らかにする大変興味深い記事が見つかったので、このブログに全文転載保存しておきたい。黒木さんの裁判に注目する多くの方々に読んでいただければ、と思っている。現在の司法制度はすでに歪んでしまっている、それがこの国の実態なのだ。




自公与党、批判封殺のため最高裁への圧力発覚 政界に激震、国会で追及へ発展か
Business Journal 2月8日(日)

 最高裁判所の元裁判官で明治大学法科大学院教授の瀬木比呂志氏が、1月16日に上梓した『ニッポンの裁判』(講談社現代新書)において、衝撃の告発をしている。1月29日付当サイト記事『与党・自公、最高裁へ圧力で言論弾圧 名誉毀損基準緩和と賠償高額化、原告を点数化も』でも報じたが、自民党と公明党による実質上の言論弾圧が行われているというものだ。

 2001年、当時与党であった自民党は、森喜朗首相の多数の失言を受けて世論やマスコミから激しく批判され、連立与党の公明党も、最大支持母体の創価学会が週刊誌などから「創価学会批判キャンペーン」を展開されるなど、逆風にさらされていた。そのような状況下、自公は衆参法務委員会などで裁判所に圧力をかけ、裁判所がそれを受けて最高裁を中心に名誉棄損の主張を簡単に認めるように裁判の基準を変え、賠償額も高額化させ、謝罪広告などを積極的に認めるようになった。

 両党が森内閣や創価学会への批判を封じるために最高裁に圧力をかけたという事実はもちろん、最高裁が権力者である自公与党の意向を受けて裁判における判断基準を変えていたことも、民主主義の大原則である言論の自由、また三権分立をも根底から脅かす、大きな問題である。

 また、名誉棄損の基準が歪み、それを悪用した恫喝訴訟が民事でも刑事でも蔓延しており、大きな社会問題となって各方面に影響が広がっている。瀬木氏の告発を報道する国内メディアが相次ぎ、海外の報道機関も取材に訪れていることから、さらに騒動は拡大する見通しだ。時の政権が実質上の言論弾圧をしていた事実が明らかになったことで、政界にも動揺が走っている。

●政界に広がる反響

 前回記事は瀬木教授の最高裁内部の実態の告発を中心としていたが、政界での事実経緯を振り返るため、今回は当時の議会での動きを振り返ってみたい(以下、肩書はいずれも当時のもの)。

 森政権や創価学会が世論から批判を強く浴びていた01年3月、法務大臣の高村正彦氏(自民党)は参院法務委員会で、「マスコミの名誉毀損で泣き寝入りしている人たちがたくさんいる」と発言した。これを受けて故・沢たまき氏(公明党)は「名誉侵害の損害賠償額を引き上げるべきだと声を大にして申し上げたい」と、同月の参院予算委員会で損害賠償額の引き上げについて、まさに“声を大にして”要求。魚住裕一郎氏(同)も同年5月の参院法務委員会で「損害賠償額が低すぎる」「懲罰的な損害賠償も考えられていけばいい」と強く要求した。

そして同月の衆院法務委員会で、公明党幹事長の冬柴鐵三氏が大々的にこの問題を取り上げて「賠償額引き上げ」を裁判所に迫った。これを受けて最高裁民事局長は「名誉毀損の損害賠償額が低いという意見は承知しており、司法研修所で適切な算定も検討します」と回答した。

 つまり、自民党と公明党の圧力によって最高裁が名誉棄損の基準を変えていたのだ。そして裁判所が安易に名誉毀損を認めるようになり、その結果、不祥事を起こし追及されている側がそれを隠ぺいするために、また性犯罪者が告訴を取り下げさせるために、告発者や被害者を名誉毀損だとして訴える“恫喝訴訟”が頻発するようになった。

 このような経緯について、現役の国会議員からも与党に対して批判の声が上がっている。衆議院議員の落合貴之氏(維新の党)は、告発に驚きを隠さない。

実質的な恫喝目的で名誉棄損を悪用するケースや、公益通報者を保護しないケースなど、多様な陳情が寄せられています。その原因が、与党の自民党の圧力にあったという告発に大変驚いています。恫喝訴訟の問題については、国民を適切に保護するために、また被害者の方々が保護されるように、議員としてしっかりと取り組んでいきたいと思います」

 一方、都内の区議会などでも反響が上がっている。世田谷区議を務める田中優子氏(無所属)は、次のように語る。

「性犯罪者側が、被害者女性や支援者を訴えている恫喝訴訟問題などに強い憤りを感じていました。しかし、その元が与党による最高裁への圧力だと聞き、大変驚いています。司法がこんな状態では、いったい国民は何を信じればよいのでしょうか。このような問題は区議としても注視して、被害者が適切に保護されるように尽力していきます」

 このように本問題については、政界でも国会から地方議会に至るまで、多くの議員から批判の声が上がっており、今後国会での質問主意書などで取り上げられる可能性も高い。

 これは現在の安倍政権ではなく、過去の自民党・公明党の問題であるが、安倍政権が過去の与党の問題に対しても毅然とした対応をできるのか、今後の動きに注目が集まっている。


<おわり>




2015年1月20日火曜日

産廃業者から政治献金を受け取った知事 ②


朝日新聞の記事からの転載です。

http://digital.asahi.com/articles/ASG9846TVG98TNAB00Q.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG9846TVG98TNAB00Q


<宮崎> 知事側へ300万円、表面化せず 県政の「死角」

朝日新聞 堀川勝元2014年9月9日03時00分


 「私の後援会では、そのような多額のものは他に例がない」

 河野俊嗣知事の後援会が、県内の産廃会社の元社長側から300万円の資金提供を受けていたことについて、知事はそう述べ、有力な支援者だったことを認めた。

 知事によると、元社長と知り合ったのは2010年12月26日の知事選挙の前。支持者にあいさつ回りする際、東国原英夫・前知事の元秘書から「支援者の1人」として紹介された。

 知事は8月31日の取材の時点では、知事に当選した後には元社長とは会っていない、と説明。それが、5日に開いた記者会見では、知事就任後も4~5回会ったと訂正した。食事をともにしたり、産廃会社の社員や家族が参加する夏のフェスティバルに参加したりしていたという。

 「県内外の政治情勢や、過去のことも含めて話を聞いた。色んな情報を得ることができた」と振り返った。

■氏名は水面下

 元社長側から資金提供があったのは11年7月下旬。知事の元政務秘書に現金で300万円が手渡された。その際、元社長は、毎年公開される政治資金収支報告書に個人名を記載する義務がない「会費」での支払いを望んだという。

 後援会側は現金を事務所の金庫で保管。本来ならば11年の収入として一括で処理する必要があるが、11年分と12年分の「会費」と、氏名記載の義務がない5万円以下の「寄付」に振り分けて計上した。この結果、収支報告書には元社長の名前は出てこなくなった。

 また後援会への資金提供とは別に、産廃会社から知事の元政務秘書の個人口座に毎月10万円が振り込まれ始める。12年12月から今年3月までに計16回、総額160万円に達した。

 同年12月11日、県の定期検査で元社長の産廃会社が管理する最終処分場で、水質検査記録の改ざんが発覚した。「柔軟な対応ができないか」。改ざん発覚後、知事は元政務秘書からそのような趣旨のことを尋ねられた、と明かす。知事は「(担当課職員に)どんな基準があるのか、他県の事例はどうか、よく調べて丁寧に対応していこう、とは話した」と説明した。

 県は13年3月、産廃会社に30日間の事業停止処分を下した。知事は「国の基準にのっとり、厳正に処分した」と明言。5日開会の県議会でも「資金問題で行政判断を曲げたことは一切ない」と強調した。一方、産廃会社はこの処分の取り消しを求めて県を提訴した。

■処理巡り釈明

 知事側と元社長の関係が表面化したのは、朝日新聞の報道がきっかけ。その後、知事自らが元社長からの300万円の資金提供を明らかにした。そのうえで、「会計処理に不適切な点があった」と釈明。「様々な臆測を呼んでいることに深く反省している」と謝罪した。

 元社長は新燃岳の降灰処理事業を巡る詐欺事件で今年2月に逮捕、その後起訴された。知事の後援会は「道義的に問題がある」として、元社長の親族に7月3日、300万円の返還を申し出たという。

     ◇

 河野知事の後援会や元政務秘書への一連の資金提供は、多額の資金提供者の名前が表に出ないように処理されていた。県民から見えない「死角」はどうつくられたのか、知事や後援会の証言などをもとに迫る。(堀川勝元)


<おわり>


2015年1月19日月曜日

産廃業者から政治献金を受け取った知事


毎日新聞の記事からの転載です。

http://mainichi.jp/area/miyazaki/news/20140906ddlk45010338000c.html
河野知事:政治資金報告書・分散記載問題 知事「認識不足だった」 処理の元秘書、業者から160万円受領 

宮崎毎日新聞 2014年09月06日 地方版 

 「県民にご心配をおかけし、心よりおわび申し上げます」−−。河野俊嗣知事は5日、新燃岳の降灰処理を巡る詐欺事件で逮捕・起訴された都城市の廃棄物処理業者の元社長らから受けた300万円を、後援会が政治資金収支報告書2カ年分に分散記載した問題について、同日開会の県議会で深々と頭を下げた。知事は、元政務秘書の個人口座に同じ業者から計160万円が振り込まれていたことも明らかにした。

  記者会見した河野知事によると、300万円は2011年7月、元社長が宮崎市内で元秘書に後援会費として現金で手渡し、知事も報告を受けた。同年の収支報告書をまとめる際に50万円分のみが分散記載されたと知ったが、知事は「その年ごとの会費として処理しようと元政務秘書が思った。私も認識不足だった」と語り、一連の報道まで問題に気付かなかったとした。

  元社長は、東国原英夫前知事の支援者として10年の知事選前、前知事の秘書から紹介されたという。河野知事は当選後の元社長との面会を否定していたが会見で「就任後一緒に食事をするなど4、5回会った」と発言を修正した。処理業者が事業展開する鹿児島県内の首長と知事室で面会したことも認めたが、いずれも、業者が管理する最終処分場の水質検査記録の改ざんが12年に県定期検査で判明する前で「発覚後はない」と強調した。

  一方、160万円は業者側が主催する異業種交流会の経費として、事務局を務めた元政務秘書の口座に12年12月〜14年3月、毎月10万円振り込まれた。知事は金銭授受を「知らなかった」と言い、「疑念を招きかねないことで、現在のスタッフにこのようなことがないようにきつく指導した」と語った。【門田陽介】


 「政治資金管理報告書への記載方法に問題があった」という記事だが、河野知事が東国原元知事から紹介された産廃業者から政治献金を受け取っているという事、また、その業者が管理する最終処分場の水質検査記録が改ざんされていた事、これらは紛れもない事実だ。

 宮崎県の産廃行政、その信頼性に疑問の目が向くことは至極当然であり、それは当事者たちが自ら招いた結果に他ならない。

<おわり>