「いつの間にか僕は、励まされていた」
それまで、ツイッターは僕にとって単なる「読み物」だった。
配信されるニュースや、何人かの「気に入った」個人のコメント、不意の事故や天災についての情報、それを読むだけのメディアだった。
ある意味、僕のタイムラインは目的に沿って整頓されている。
そこに、誰がリツイートしたのか、ある女性のツイートが飛び込んできた。
「ゴミは持って帰ってください」
… 何だろう、これ…?
初めて見た黒木さんのツイート、今年の3月の事だった。
ツイッターには「タイミング」という、縁のようなものがある。
膨大な情報が寄せられてくるタイムライン、もし時間が1時間でも違っていたら、僕が彼女のツイートを見ることはなかっただろう。
それからも数日に一度、彼女のツイートは僕のタイムラインに現れた。
「知事はなぜ会おうとしないのですか」
東京郊外の通勤ラッシュ、配信されるニュース、コラムニスト…、そんな環境で見るツイッターの中で、彼女の言葉は、おびただしい生々しさを放っていた。「きっとこの人は本気なんだ」、そう思った僕は、彼女をフォローすることにした。
それでも、僕にとって彼女の話は他人事、ツイッター上での「読み物」のひとつに過ぎない…、僕自身がそう思っていたし、そのはずだった。
「製品じゃないです、ただのゴミです」
フォローを始めて、連日見かけるようになった彼女のツイート…。いや違う、正確にいうと、「見かける」のではない、僕は自分から、彼女の言葉を探すことが日課となっていた。
「ゴミはもって帰って、自分の前に積んでください」
こんな「人間として当たり前」のことを、
なぜツイッターで叫ばなければならないのだろう…。
彼女は膨大な理不尽を抱えている…、僕はそう思った。
そして中身は違うけれど、同じような理不尽を僕も抱えている。
もしかすると、この理不尽は、日本中に蔓延しているのではないか…。
「責任取ってください」
そう言いたい相手が、この国に何人いるだろう…。
… 言うべきことは、言わなくちゃいけない。
いつの間にか僕は、彼女の言葉に励まされていた。
そんな感情がリンクして、すっかり他人事ではなくなってしまった僕は、事の真実が知りたくなって、彼女のブログを読むことにした。
<④につづく>