ページ

2015年6月16日火曜日

僕の考える黒木さんの裁判 ①



6月12日、黒木さんの5回目の裁判があった。

今回も当事者である黒木さんがブログを書いている。まだ(続き)との事なので、それを読み終えてから、僕も何か思うところを書こうか…、と思っていた。

ところがツイッター上で、従来から黒木さんを応援しているであろう方たちの間で、若干のミスリードが広がっていると感じた。こうした状況は、裁判を抱える黒木さんにもいい影響があるとは思えないので、急遽このブログを書いている。

結論から言うと、黒木さんの対応はそれほど間違ってはいない、と僕は思うのだ。


■名誉棄損裁判

まずは名誉棄損裁判について認識を共有したい。以下、何人かの弁護士さんのHPやWiki、僕自身が読んだ本のまとめ、過去の判例などを記述する。僕のsomethingは一切入っていない。とはいえ所詮は素人の覚書程度、そこは考慮いただきたい。

【 事実適示による名誉棄損が免責されるための抗弁3要件 】

① 事実の公共性
  摘示した事実が公共の利害に関する事実であること
② 目的の公益性
  その事実を摘示した目的が公益を図ることにあること
③ 事実の真実性、または真実相当性
  摘示した事実が真実であること、または真実であると信じるについて相当の理由があること

裁判はこの3要件を被告側が立証できるかに重点が置かれる。

この「真実相当性」について、最高裁判決に以下の記述がある。

「行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁 昭和44年6月25日)

また「真実性の立証」について重要なポイントがある。

「真実性の立証とは、摘示された事実が客観的な事実に合致していたことの立証であって、これを行為当時において真実性を立証するに足りる証拠が存在していたことの立証と解することはできないし、また、真実性の立証のための証拠方法を行為当時に存在した資料に限定しなければならない理由もない。」(最高裁 平成14年1月2日)

このポイントについて「真実相当性」の場合は以下。

「名誉毀損行為当時における行為者の認識内容が問題になるため、行為時に存在した資料に基づいて検討することが必要となる。」(同判決)

これは事実摘示行為を行った時点での認識と、その後判明した事実について言及している。「真実性」を立証する場合は、摘示行為を行った後に判明した事実が真実性の立証の証拠に成り得るが、「真実相当性」の立証の場合、それらは証拠とは成り得ない。



■ 黒木さんの裁判について考えてみる

僕は訴状も見ていないし傍聴にも行っていないので、裁判の中身について「あれこれ」言及出来る立場にない。なので、「ひとつの仮定」として、これからの話をすすめたい。これ以降の記述は、個人のケーススタディであると思ってほしい。

論点を「フェロニッケルスラグの溶出有害」の一点に絞ってみた。

摘示した事実 山林にフェロニッケルスラグが埋土され有害物質が流出した
摘示行為   ネット上(ブログ、ツイッター)で上記事実を公表した

で、これを基に、抗弁の概念を図にしてみる。




逆に解かり難くなってしまったかもしれない…。(笑)

①②の立証は共通、③は「真実性」、つまり「フェロニッケルスラグの溶出有害」を立証する場合、ブログを公表した時点での認識や事実と、その後で知った事実の両方が証拠で使える。

逆に③を「真実相当性」でいくならば、「フェロニッケルスラグの溶出有害」は立証できないが、そう信じるだけの確固たる証拠を提出する事になる。この場合は、ブログを公表した後で知った事実は証拠として使えない。

少し話が長くなったので次回に続ける事にする。

実際の裁判はいくつかの論点があるだろう。しかし今回のブログのポイントは「フェロニッケルスラグの有害性を立証するのは黒木さんだ」という主張に「待った」をかける事にある。

黒木さんの書いたブログは何ひとつ間違ってない。

そうは思わないか?


<②につづく>